不動産投資の節税は「課税の繰延」にすぎない。売却時の譲渡税まで通算した20年トータル損益
- 節税の正体は「税金を無くす」ことではなく「先送りする」ことです。減価償却で浮いた税金の一部は、売却時の譲渡所得税として戻ってきます。
- 筆者試算では、20年間の節税累計額は課税所得のブラケットにより166万円〜455万円、売却時の譲渡所得税は約168万円(いずれも目安)。
- 本当に得になるのは、保有中の税率と長期譲渡税率20.315%との「差」だけです。課税所得330万円以下では差がほぼ消えます。
- 2026年度税制改正で貸付用不動産の評価が取得価額の80%基準に変わり、相続税対策としての節税効果もほぼ無効化されました。
- 節税を主目的に物件を選ぶと、キャッシュフローがマイナスの物件を掴みやすくなります。まず立地・価格・出口を検証することが先です。
「不動産投資は節税になります」。この一言を信じて物件を買った方から、5年後、10年後に相談を受けることが何度もありました。多くの場合、節税そのものは実際に起きています。問題は、その節税が永久に得をする仕組みではないという一点を、誰も説明していないことです。
この記事では、減価償却によって毎年の税金が軽くなる仕組みと、その裏側で進行する「取得費が減っていく」という現象を、3段階のメカニズムとして図解します。そして、20年間の節税累計額と、売却時にかかる譲渡所得税を通算したトータル損益を試算表で示します。
結論を先に言えば、不動産投資の節税で本当に得をするのは、保有中の所得税・住民税率と、売却時の長期譲渡税率20.315%との「差」の部分だけです。この差が小さい方にとって、節税という言葉は数字の上では成立しません。
売り手側が「節税になります」とだけ説明し、出口の税金まで含めた通算損益を示さないのは、このサイトが繰り返し指摘してきた「売り手が絶対に書かない数字」の典型です。ここでは、その数字を実際に計算して示します。
節税の正体—「課税の繰延」とは何か
不動産投資における節税は、多くの場合、給与所得と不動産所得を損益通算し、減価償却費という帳簿上の経費を計上することで実現します。実際に現金が出ていくわけではないのに経費にできるため、その年の課税所得が圧縮され、所得税・住民税が軽くなります。
ここまでは事実です。しかし、この節税には見落とされがちな裏側があります。減価償却費として計上した金額は、物件の取得費から差し引かれ続け、いずれ物件を売却するときに「取得費が減っている」という形で戻ってきます。つまり節税は、税金を消しているのではなく、支払うタイミングを保有中から売却時へ先送りしているにすぎません。
この「先送り」自体は違法でも悪いことでもありません。問題は、先送りされた税金の存在を知らずに「節税=得」とだけ理解して物件を買ってしまうことです。
私たちが金融機関で融資審査をしていた頃、確定申告書に不動産所得の赤字が計上されている申込人を数多く見てきました。赤字の内訳を見ると、その多くが減価償却費によるものでした。実際の家賃収入はプラスなのに、帳簿上は赤字になっている。この状態そのものは制度として正しく使われていますが、申込人本人がその赤字の「出どころ」を正確に理解していないケースが少なくありませんでした。

なぜ減価償却が節税になるのか
減価償却とは、建物のように年数をかけて価値が減っていく資産の取得費用を、法定耐用年数に応じて分割して経費計上する会計上のルールです。実際に現金の支出がない年でも、この分割された金額を経費として計上できるため、帳簿上の不動産所得を赤字にしやすく、給与所得など他の所得と損益通算することで税金を還付・軽減できます。
ここで多くの説明が止まってしまいますが、私たちが強調したいのはこの先です。減価償却費として経費計上した金額は、物件の「帳簿上の値段」である取得費から、その分だけ機械的に差し引かれていきます。次の図で、この関係を3段階に分けて見てみましょう。
減価償却の対象になるのは建物部分だけで、土地は対象外です。これは、土地は年数が経過しても価値が減らないという会計上の考え方にもとづきます。つまり、物件価格のうち建物の割合が大きいほど、減価償却費を大きく計上できるということでもあります。新築より中古、木造よりRC造かどうかで耐用年数が異なるため、同じ価格の物件でも節税効果は個別の条件によって変わってきます。
3段階で見る「節税分が出口で返ってくる」仕組み
この3段階が、この記事全体の背骨です。第1段階では税金が軽くなり、第2段階ではその代償として取得費が静かに減っていき、第3段階で売却時にその代償が譲渡所得税という形で請求されます。
譲渡所得の計算式は次の通りです。譲渡所得=譲渡価額−(取得費−減価償却累計額)−譲渡費用。減価償却累計額が大きいほど、括弧の中の数字が小さくなり、結果として譲渡所得(売却益)が大きく計算されます。
第1段階だけを切り取って説明する営業トークは少なくありません。「経費で落とせるので節税になります」という説明の多くは、この第1段階で話が止まっています。第2段階・第3段階まで踏み込んで説明されることは、私たちの見てきた限りではまれです。

取得費はどう減っていくか—簿価の推移を見る
言葉で説明するより、数字の推移を見た方が分かりやすいと思います。次の図は、物件の取得費(簿価)が保有年数とともにどのように減っていくかを、譲渡価額(売却できる価格の目安)が変わらないという仮定のもとで示したものです。
取得費の線(青)が右肩下がりになっているのに対し、譲渡価額の線(灰色点線)は横ばいです。この2本の線の差が、売却時に課税される譲渡所得そのものになります。減価償却を多く取れば取るほど、この差は大きくなります。
もう一つ確認しておきたいのは、この図が示しているのはあくまで「価格が変わらない」という前提のもとでの話だという点です。実際には物件価格が下落すれば譲渡所得はさらに圧縮されますし、逆に値上がりすれば譲渡所得はもっと大きくなります。ここで伝えたいのは値動きの予測ではなく、減価償却を取ること自体が、値動きとは別に譲渡所得を押し上げる要因になる、という構造そのものです。
「不動産投資で節税になる」という言葉を信じて相談を投稿する人は多いのですが、回答者の反応は総じて厳しいものです。特に繰り返し出てくるのが次の指摘です。
- 「税金が戻ってくる=赤字だったということ。喜ぶ話ではない」という趣旨の回答が非常に多く見られます。還付金だけを見て得をしたと感じてしまう相談者に対し、その前提には不動産所得の赤字があることを冷静に指摘する声が目立ちます。
- 減価償却の実額についても、「RC造・耐用年数47年の物件では、建物価格が4,700万円あっても、年間で計上できる減価償却費は100万円程度にとどまる」という具体的な試算を示す回答があります。土地部分は償却できないため、建物価格が思ったより小さいと節税効果も限定的になるという内容です。
- これらの声に共通するのは、「節税額の大きさ」だけを見て、その裏にある赤字や、出口で戻ってくる税負担を見ていない相談者が多いという指摘です。
- 「節税で得た分は、売却時の譲渡所得税として一部が戻ってくる構造になっている」と説明する回答者もおり、保有中の節税だけを見て判断すると出口で想定外の税負担に驚くことになる、という警告も見られます。
個別の数値は物件ごとに異なりますが、還付=赤字という構造そのものは、税制上の事実として押さえておく必要があります。
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- 設立2002年/資本金9,000万円/宅建業免許 国土交通大臣(1)第10826号
注意 家賃保証(サブリース)は永久のものではありません。借地借家法32条1項により借上賃料が減額される場合があると、同社が公式に明記しています。
注意 面談特典の対象は年収・年齢・勤続年数・勤務先の条件を満たす方に限られます。条件は公式ページで必ずご確認ください。
上記はJPリターンズの公表値・公開情報にもとづく記載です。最新の条件は公式サイトでご確認ください。
筆者試算モデルの前提—20年間のシミュレーション設計
ここからの試算はすべて、私たちが計算のために設定した仮のモデルにもとづく「筆者試算の目安」です。実際の物件・税額は個別の条件によって異なりますので、あくまで仕組みを理解するための数字としてご覧ください。
試算モデルの前提
物件価格2,000万円(土地800万円・建物1,200万円)/鉄筋コンクリート造・法定耐用年数47年/取得時点で築22年の中古区分マンション/簡便法による残存耐用年数を29年と設定/年間の減価償却費は建物価格1,200万円÷29年=約41.4万円/保有期間20年/売却価格は取得価格と同額(2,000万円)と仮定し、譲渡費用は本試算では考慮していません。
20年間の累計減価償却額は、41.4万円×20年=約828万円になります。この828万円という数字が、以降の試算表とグラフすべての土台になります。
この前提はあくまで一つのモデルです。実際には建物と土地の按分比率、耐用年数の判定方法、購入諸費用の扱いなど、物件ごとに条件が異なります。ここで大切なのは正確な税額計算ではなく、「減価償却を取れば取るほど、取得費が減り譲渡所得が膨らむ」という構造そのものを、具体的な数字の感覚として持っておくことです。
20年トータル損益試算表—節税累計と譲渡税を通算する
累計減価償却額828万円をもとに、保有中の税率帯ごとに20年間の節税累計額を計算し、そこから売却時の譲渡所得税(長期譲渡20.315%)を差し引いたトータル損益を一覧にしました。
| 保有中の税率帯 | 20年節税累計(目安) | 譲渡所得税(目安) | 20年トータル損益(目安) |
|---|---|---|---|
| 20%程度(課税所得195万円以下〜330万円以下) | 約166万円 | 約168万円 | 約−2万円 |
| 33%程度(課税所得900万円以下) | 約273万円 | 約168万円 | 約+105万円 |
| 43%程度(課税所得900万円超〜1,800万円以下) | 約356万円 | 約168万円 | 約+188万円 |
| 50%程度(課税所得1,800万円超〜4,000万円以下) | 約414万円 | 約168万円 | 約+246万円 |
| 55%(課税所得4,000万円超) | 約455万円 | 約168万円 | 約+287万円 |
次のグラフは、このうち20%・43%・55%の3つの税率帯を抜き出して、節税累計と譲渡所得税を並べたものです。
譲渡所得税の棒(赤)はどの税率帯でもほぼ同じ高さです。これは、譲渡所得税が保有中の所得水準に関係なく、長期譲渡なら一律20.315%という固定税率だからです。差がつくのは、節税累計額の棒(緑)の高さだけです。
試算表を見て気づいてほしいのは、譲渡所得税の欄がどの税率帯でもほとんど動いていないという点です。これは長期譲渡所得税が保有中の所得水準と無関係に一律20.315%で計算されるためです。動くのは節税累計額の方だけであり、この非対称性こそが「税率差がある人だけが得をする」という結論の根拠になっています。
また、この試算では譲渡費用(仲介手数料や印紙代など)を考慮していません。実際の売却では物件価格の3〜5%程度の譲渡費用がかかるのが一般的で、これを織り込むとトータル損益はさらに数十万円程度下振れする可能性があります。試算表の数字は、あくまで税率差の構造を理解するための目安として受け取ってください。

なぜ課税所得330万円以下だと節税が成立しないのか
試算表とグラフから分かる通り、課税所得330万円以下(税率20%程度)の層では、20年間の節税累計額と売却時の譲渡所得税がほぼ同額になり、トータル損益はゼロに近づきます。次の図で、この違いをもう一度整理します。
この構造は、年収帯によって節税の損得がどう変わるかという話に直結します。詳しい年収別の早見表は年収600万〜2,000万円で節税額がいくら違うかを試算した記事で整理していますので、あわせてご覧ください。
課税所得330万円以下の層で節税がほぼゼロになるという結果は、直感に反すると感じる方もいるかもしれません。しかし考えてみれば当然のことです。保有中に安い税率でしか節税できなかった人が、売却時には保有中の税率に関係なく一律の譲渡税を払うのですから、差が出にくいのは自然な帰結です。逆に言えば、高い税率を払っている人ほど、減価償却という仕組みの恩恵を受けやすい制度だとも言えます。
この記事の図4は、あくまで課税所得330万円以下と1,800万円超という両極端を対比したものです。実際にはその間に33%・43%・50%という段階があり、それぞれの層でトータル損益は連続的に変化します。自分がどの段階にいるかを確認するには、まず源泉徴収票や確定申告書に記載された課税所得の欄を見ることから始めてください。
本当に得になるのは「税率差」だけという核心
ここまでの試算を一言でまとめると、不動産投資の節税で実際に得をするのは、保有中の所得税・住民税率(最大55%)と、長期譲渡税率20.315%との「差」の部分だけです。減価償却そのものは税金を消しているのではなく、税率の高い期間に税金を安くし、税率の低い売却時にまとめて精算する仕組みだと理解してください。
節税を主目的に不動産投資を検討するなら、まず自分の課税所得がどの税率帯にあるかを確認してください。課税所得900万円(税率33%)を下回るあたりから、税率差による恩恵は急速に小さくなります。
また、この試算はすべて長期譲渡(保有5年超)を前提にしています。短期譲渡(5年以下)で売却した場合、税率は39.63%に跳ね上がり、節税で稼いだ分がまるごと譲渡税に消える、あるいはマイナスになる可能性すらあります。出口のタイミングについては5年ルール・デッドクロス・残債割れを整理した出口戦略の記事で詳しく解説しています。
この核心を理解すると、営業トークの見え方も変わってきます。「節税になります」という説明を受けたとき、まず確認すべきは自分の課税所得がどの税率帯にあるかです。年収600万円台の会社員と、年収2,000万円の開業医とでは、同じ物件を買っても節税の意味がまったく異なります。この違いについては次の記事で詳しく年収帯別に一覧化しています。

2026年度税制改正で相続税対策としての妙味も消えた
不動産による節税は、所得税だけでなく相続税の分野でも語られてきました。しかし2026年度税制改正(2026年4月成立)により、この構造も大きく変わっています。相続開始前5年以内に取得した貸付用不動産は、原則として「課税時期における通常の取引価額」、つまり取得価額の80%程度で評価されることになりました。
従来は評価額を60〜70%圧縮できるケースもありましたが、改正後は20%程度の圧縮にとどまります。「駆け込みで不動産を購入して相続税評価額を下げる」という対策は、事実上無効化されたと考えてよいでしょう。
この流れは今回の改正だけで起きたものではありません。2022年の最高裁判決で路線価評価による過度な圧縮が否認され、2024年1月からはタワーマンションの評価方法を見直す国税庁通達が適用され、そして2026年度に貸付用不動産の5年ルールが導入されました。10年がかりで「不動産による評価額圧縮」が段階的に封じられてきた、という系譜として理解しておくと見通しがよくなります。不動産小口化商品による評価圧縮も、取得時期を問わず通常の取引価額で評価されるようになっており、こちらもほぼ手段として使えなくなっています。
この一連の改正の流れは、単発の増税ではなく、制度側が「不動産を使った評価額の圧縮」を段階的に狭めてきたという一貫した方向性として理解するべきです。所得税の節税と相続税対策は別の制度ですが、「不動産を持てば税金が有利になる」という発想そのものが、以前より通用しにくくなっている点は共通しています。
相続税対策として不動産を購入する場合、多くの提案では自己資金の一部を投資用ローンでまかなうことが前提になっています。このとき、投資用ローンの返済額が将来の住宅ローンの借入枠にどう影響するかまで説明する提案は多くありません。投資用ローンを先に組むとマイホームが買えなくなる仕組みを試算した記事もあわせて確認しておくと、相続税対策としての不動産購入が本当に自分の人生設計に合っているかを判断しやすくなります。
それでも減価償却を活用する意味はあるのか
ここまで否定的な数字ばかり並べてきましたが、減価償却による節税そのものが無意味というわけではありません。税率差が十分にある層にとっては、確実にプラスの効果があります。問題は、節税だけを目的に、収支の合わない物件を買ってしまうことです。
私たちが購入後の相談を読み込む中で見てきた失敗の多くは、節税効果を強調されて購入した物件が、実際にはキャッシュフローがマイナスで、毎月の持ち出しが発生していたケースでした。節税額よりも持ち出し額の方が大きければ、そもそも本末転倒です。団体信用生命保険を生命保険代わりと説明されるケースも含め、団信は生命保険の代わりになるのかを実額で検証した記事もあわせて確認しておくと、営業トークの全体像がつかみやすくなります。
ワンルームマンション投資が本当に儲からないのかという根本的な疑問については「買った瞬間に2割損」の正体を分解した記事で、また残債割れした場合の出口の考え方は持ち出し完済・任意売却・保有継続の損益分岐を計算した記事で扱っています。節税は判断材料の一つにすぎず、それ単独で購入を決める理由にはならないというのが、数十社分の販売資料を読み比べてきた私たちの実感です。
「不動産投資はやめとけ」という通説がどこまで正しいかは通説を数字で検証した記事で整理していますので、節税以外の判断軸もあわせて確認してください。
最終的に私たちが読者にお伝えしたいのは、節税という言葉の前に、まず物件そのものの収支計算書を自分の目で確認する習慣を持ってほしいということです。減価償却による節税額は、確定申告書の数字を追えば誰でも検証できます。検証できない「節税になります」という口頭の説明だけを根拠に、大きな借入をする必要はありません。
節税を切り口にした提案を受けたら、この記事の試算表を思い出してください。20年後、譲渡所得税を差し引いた後にいくら残るのか。その数字まで示してくれる提案者かどうかが、信頼できるかどうかの一つの目安になります。
よくある質問
保有中の税率と、売却時の長期譲渡税率20.315%との差が大きいほど得になります。筆者試算では課税所得900万円を超えるあたりから明確なプラスが出やすく、課税所得330万円以下ではほぼゼロかわずかにマイナスになる目安です。
いいえ。長期譲渡所得税は保有中の所得水準にかかわらず一律20.315%の固定税率です。差がつくのは保有中に節税できた金額の大きさであり、譲渡税そのものの税率は変わりません。
短期譲渡の税率は39.63%と、長期譲渡の約2倍になります。保有中に節税した金額よりも譲渡税の負担が大きくなりやすく、トータルではマイナスになる可能性が高まります。売却は長期譲渡になるタイミングまで待つのが基本です。
2026年度改正の中心は相続税評価の見直し(貸付用不動産の5年ルール)であり、所得税の減価償却の仕組み自体が変わったわけではありません。ただし相続税対策としての不動産購入の妙味は大きく減っています。
簡便法などで算出した残存耐用年数の期間中、計上を続けられます。耐用年数を経過すると建物の帳簿価額はゼロに近づき、それ以降は減価償却費を計上できなくなるため、節税効果も期間限定です。
お勧めしません。節税は税率差がある場合に限られた効果であり、物件自体の収益性や出口の取りやすさとは別の話です。まず立地・価格・出口・利回りを検証し、節税は付随的なメリットとして考える順序が安全です。 また、法人で不動産投資を行う場合も、取得費が減価償却累計額の分だけ減り売却時の譲渡益が膨らむという基本構造は個人と共通しており、法人化すれば繰延の問題が消えるわけではありません。
還付金が出るのは、不動産所得が赤字になり、給与所得と損益通算した結果、納めすぎていた所得税・住民税が戻ってくるためです。つまり還付金の裏側には、その年の不動産所得の赤字が必ずあります。赤字の主な原因は減価償却費であることが多く、現金が出ていかない経費である点は有利ですが、「税金が戻る=儲かった」という理解は正確ではありません。
物件の建物価格や築年数によって金額は変わりますが、筆者試算の目安として、鉄筋コンクリート造・耐用年数47年の新築物件で建物価格が4,700万円程度の場合、定額法での年間減価償却費は100万円程度にとどまります。土地部分は減価償却の対象外のため、物件価格全体に対する節税効果は思われているより小さくなりがちです。

