出口戦略:5年ルール・デッドクロス・残債割れ — 区分ワンルームが「売れない」3つの理由

出口戦略:5年ルール・デッドクロス・残債割れ — 区分ワンルームが「売れない」3つの理由 お金の話(融資・利回り・税金)
お金の話(融資・利回り・税金)

不動産投資の出口戦略——5年ルール・デッドクロス・残債割れで「売れない」本当の理由

監修・執筆 不動産投資リサーチ編集部 金融・不動産分野のリサーチ/メディア運営/一次情報を突き合わせて、売り手の説明を検証しています
結論から先に。営業トークではなく、数字で判断できるように書いています。
この記事の結論(先に言います)
  • 短期譲渡税率39.63%と長期譲渡税率20.315%の差は、売却時期の数え方一つで決まります。
  • 5年の判定は売却日からでなく、譲渡した年の1月1日時点の所有期間で決まります。
  • デッドクロス発生後は帳簿上黒字でも現金が流出し、税金だけ先に出ていく状態になります。
  • 減価償却800万円を取れば、売却益も同額膨らみ、節税分の一部が譲渡税として戻ってきます。
  • 課税所得900万円超(税率43%)でないと、保有中の節税と譲渡税の差は十分に出ません。

「買ったときの利回りは説明を受けたが、売るときの話は誰もしてくれなかった」——そう振り返る投資家に、私たちはこれまで何度も出会ってきました。

私たちは、不動産会社の販売資料を公的な一次情報と突き合わせて検証することを専門にしています。これまでに数十社分の販売資料と収支シミュレーションを読み比べ、Q&Aサイトに投稿された購入後の相談も継続的に読み込んできました。売り手が説明するのはたいてい「買うときの数字」までで、「売るときの数字」は語られません。

この記事では、①譲渡所得税が39.63%から20.315%に切り替わる「5年」の正しい数え方 ②帳簿は黒字なのに現金が流出する「デッドクロス」の仕組み ③減価償却を取った分だけ売却益が膨らむという逆算構造、の3つの視点から、区分ワンルームが「売れない」と言われる理由を分解していきます。

いずれも売り手側の資料には出てこない数字です。出口まで見通したうえで、それでも検討に値する物件なのかどうかを、あなた自身の手で判定できるようになることを目指します。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・不動産の取得を勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。掲載している数値・制度は執筆時点(2026年7月)のもので、最新の情報は各社の公式サイト・公的機関の一次情報をご確認ください。また本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含みます。
この記事の更新履歴
  • 公開。すべての数値を一次情報にあたって確認し、時点と出典機関を明記しました。
  • 2026年度(令和8年度)税制改正の成立(2026年4月)を反映しました。相続開始前5年以内に取得した貸付用不動産の評価が、原則として取得価額の80%相当となる点を追記しています。
  • 東日本レインズの2026年5月データで、首都圏の中古マンション成約坪単価が73か月ぶりに前月比で下落したことを追記しました。ただし単月であり、トレンド転換とは断定していません。
構造

なぜ「出口」は誰も教えてくれないのか

ワンルーム投資の広告や営業トークは、たいてい「利回り」「節税」「家賃保証」といった、買うときに効く言葉で埋め尽くされています。

ですが、いつ・いくらで売れるのか、売ったら税金がいくら出ていくのか、という出口の話は、驚くほど語られません。理由は単純で、出口の数字は売り手にとって都合が悪いことが多いからです。

私たちが読み比べてきた収支シミュレーションの多くも、35年のローン返済計画は書かれていても、売却時のシミュレーションまで踏み込んだものはほとんどありませんでした。「買った瞬間に2割損」という指摘は、実は入口だけでなく出口の設計にも関わってきます。

この記事で扱う「売れない」理由は3つです。①譲渡所得税の税率が切り替わる5年の数え方を誤解している ②減価償却費が元金返済額を下回る「デッドクロス」に気づかず現金繰りが悪化する ③そもそも売却価格がローン残債を下回る「残債割れ」に陥っている、の3つです。失敗事例として語られるケースの多くも、突き詰めればこの3つのどれかに当てはまります。

まずは、最も誤解が多い5年ルールの数え方から見ていきます。

検索して上位に出てくるサイトの多くは、不動産を売る会社が運営するオウンドメディアです。そこに出口の弱点が書かれることは、構造上ほとんどありません。このサイトは、売る側でも、通説をそのまま信じる側でもない立場から、数字だけを書いていきます。

契約書にサインする瞬間より先に、出口の税金計算を済ませておくべきです。
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税制

5年ルールの正しい数え方——売却日ではなく1月1日

短期譲渡所得税率は39.63%(所得税30%+復興特別所得税+住民税9%)、長期譲渡所得税率は20.315%(所得税15%+復興特別所得税+住民税5%)です。差は約2倍近くにもなります。

問題はこの「5年」の数え方です。売却した日から遡って5年ではありません。譲渡した年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えているかどうかで判定します。

例えば2021年6月にワンルームを取得したとします。2026年中に売却すると、2026年1月1日時点の所有期間は4年7か月にとどまり、5年を超えていません。つまり短期譲渡です。「もう5年経ったから」と2026年6月に売却しても、判定は変わりません。

長期譲渡になるのは、翌年である2027年1月1日以降に売却したときです。実質的には、取得から6年目の1月1日を迎えて初めて長期譲渡に切り替わります。次の図で、この時系列を整理します。

5年ルールの判定タイミング(取得2021年6月の例)取得2021年6月判定2026/1/14年7か月→短期2026年6月「もう5年」の誤解判定2027/1/15年7か月→長期図1 「もう5年経った」と感じるタイミングと、税務上の判定日は一致しません。

この誤解は決して珍しくありません。取得日から5年が過ぎた実感だけで売却してしまい、想定より高い税率で課税されるケースは、私たちが相談を受けた中でも何件かありました。

⚠ 警告

売却を検討する際は、契約前に取得日と譲渡した年の1月1日の関係を確認しておくべきです。1年待つだけで税率がほぼ半分になることもあります。

なお、取得日がたまたま1月1日そのものだった場合でも、考え方は変わりません。起算点は取得の翌年1月1日となるため、いずれの場合も、取得から数えて6年目の1月1日以降まで待つことで、長期譲渡の扱いになります。日付が前後する年末年始の売却では、特に慎重な確認が必要です。

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税制

39.63%と20.315%——同じ譲渡益でも税額はこれだけ違う

税率の差を、具体的な金額で見てみます。譲渡益(譲渡価額から取得費・譲渡費用を差し引いた額)が800万円だったと仮定します(筆者試算の目安)。

区分税率税額の目安
短期譲渡(5年以下)39.63%約317万円
長期譲渡(5年超)20.315%約162万円
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同じ800万円の譲渡益でも、税額の差は約155万円にのぼります(筆者試算の目安)。次の図で、この差を並べてみます。

譲渡益800万円の場合の税額(筆者試算の目安)約317万円短期(5年以下)39.63%約162万円長期(5年超)20.315%図2 譲渡益800万円の場合、短期と長期の税額差は約155万円にのぼります(筆者試算の目安)。

この155万円は、売却のタイミングを1年ずらすだけで生じる差です。資金繰りの都合で急いで売りたい事情がある場合でも、あと数か月待てば長期譲渡に切り替わるのであれば、その待つ価値は十分にあると私たちは考えています。

ただし、待つ間の家賃収入や金利負担、市況の変化も同時に考える必要があります。税率だけを理由に売却時期を決めるのは、判断としては一面的です。

また、この試算は所得税・住民税だけを対象にしたものです。物件によっては、売却時に別途、仲介手数料や印紙税、抵当権抹消登記の費用なども発生します。譲渡費用として差し引ける項目もあるため、実際の手取り額は税額だけで決まるわけではないことも押さえておいてください。

電卓を叩くべきは購入時だけでなく、売却時の譲渡税でも同じことです。
電卓を叩くべきは購入時だけでなく、売却時の譲渡税でも同じことです。
メカニズム

デッドクロスとは何か——3段階で見る現金流出の仕組み

次に、デッドクロス(減価償却費が元金返済額を下回り、帳簿上は黒字なのに現金が出ていく状態)について説明します。

減価償却費(建物の取得費を耐用年数に応じて経費として計上する会計上の仕組み)は、実際には現金の支出を伴いません。一方、ローンの元金返済額は、実際に現金が出ていきます。

保有初期は、減価償却費が元金返済額を上回ることが多く、帳簿上の利益は現金の動きより低く出ます。ところが年数が経つにつれて元金返済の割合が増え、減価償却費のほうが先に減っていきます。この2つの線が交差する点が、デッドクロスです。

次の図で、3段階に分けて整理します。

①保有初期減価償却費 > 元金返済帳簿・現金とも黒字②デッドクロス減価償却費 = 元金返済ここが転換点③保有後期減価償却費 < 元金返済黒字なのに現金流出現金の動きより先に、帳簿上の利益と課税だけが残る図3 保有初期・交差点・保有後期の3段階で、現金と帳簿上の利益の関係が逆転します。
! 注意

デッドクロス後は、帳簿上の利益に対して所得税・住民税がかかる一方、手元の現金は減っていきます。税金を払うための現金が足りなくなる、という状況が起こり得ます。

元利均等返済(毎月の返済額が一定になるよう設計されたローンの返済方式)は、返済が進むほど利息部分が減り、元金部分が増えていく仕組みです。減価償却費はおおむね一定額で推移するため、元金部分が増え続ければ、いずれ両者の線は交差します。この構造そのものは、多くの区分ワンルームに共通して当てはまります。

! 知恵袋の生の声

「売り時はいつか」という相談に対して、知恵袋の回答者がほぼ共通して挙げるのが「デッドクロス」という一つの目安です。デッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回った時点を指す言葉として使われています。

この時点を境に、帳簿上の利益と実際に手元へ残るお金のズレが逆転し、税金の負担が重く感じられるようになるためです。「デッドクロスが近づいてきたら、そこが売却を検討する一つの区切り」という回答が定番化しており、初心者向けの説明でも繰り返し引用されています。

ただし、デッドクロスと譲渡税の「5年ルール」を混同している相談も少なくありません。デッドクロスは帳簿上の収支が悪化していく時期を示す言葉で、税率が変わる5年ルールとは別の概念です。両方を切り分けて理解しておかないと、売却の判断そのものを誤りかねないという指摘も繰り返し見られます。元利均等返済か元金均等返済かによっても交差の早さは変わるため、自分の返済方式を確認したうえで試算することが勧められています。築年数が浅いうちは黒字に見えても、数年後には収支が反転しうるという前提で早めに試算しておく姿勢が繰り返し勧められています。

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メカニズム

デッドクロスはいつ訪れるか——減価償却と元金返済の交差点

デッドクロスがいつ訪れるかは、建物の構造と減価償却の方法によって変わります。鉄筋コンクリート造(RC造)は耐用年数47年と長く、年あたりの減価償却費は小さくなだらかです。木造は耐用年数22年と短く、初期の減価償却費は大きいものの、早く目減りします。

区分ワンルームの多くはRC造です。減価償却費が定額でなだらかに推移する一方、元利均等返済のローンは年を追うごとに元金返済の割合が増えていきます。この組み合わせでは、保有から10〜15年程度でデッドクロスを迎えるケースが多いというのが、私たちが見てきた収支計画書からの実感です(筆者試算の目安)。

デッドクロスの時期は、売却を検討すべき時期の目安にもなります。DSCR(返済余裕率)やイールドギャップの数字が悪化し始めたタイミングと重なることが多いためです。

デッドクロスを迎える前に売却するか、迎えたあとも保有し続けるかは、手元資金にどれだけ余裕があるかで判断が分かれます。手元資金が乏しいまま保有を続けると、税金を払うために追加で資金を用意する必要が出てきます。

木造アパートのように耐用年数が短い物件では、初期の減価償却費が大きい分、デッドクロスがもっと早く、保有から5〜8年程度で訪れることもあります。物件の構造によって、出口を検討し始める時期そのものが変わってくる点も見落とさないでください。

逆算

節税の請求書は出口に届く——取得費が減るほど売却益は膨らむ

ここが、この記事で最も伝えたい逆算構造です。譲渡所得は次の式で計算されます。譲渡所得=譲渡価額−(取得費−減価償却累計額)−譲渡費用。

取得費から減価償却累計額を引く、という部分に注目してください。保有中に減価償却費を経費として計上した分だけ、売却時の取得費は目減りします。取得費が小さくなれば、その分だけ譲渡所得(売却益)は大きくなります。

つまり、保有中に減価償却で節税した金額は、消えてなくなるわけではありません。売却時に譲渡所得として姿を変え、課税対象として戻ってきます。不動産投資の節税が「課税の繰延」にすぎないと言われるのは、まさにこの構造のためです。

次の図で、減価償却を取った場合と取らなかった場合の譲渡益の違いを比べてみます。

売却価額2,000万円の内訳(筆者試算の目安)取得費2,000万円減価償却ゼロの場合取得費1,200万円譲渡益800万円減価償却800万円取得後図4 減価償却を800万円取れば、その分だけ売却時の譲渡益も800万円分膨らみます(筆者試算の目安)。

節税の請求書は、忘れた頃に出口で届きます。保有中の節税効果だけを見て判断するのではなく、売却時にどれだけの税金が戻ってくるかまで含めて、トータルで損益を考えるべきです。

ここでの取得費や譲渡益の金額は、あくまで説明のための単純化した例です(筆者試算の目安)。実際には土地部分は減価償却の対象外であるなど、細かな按分が必要になります。とはいえ「減価償却を取った分だけ取得費が減る」という基本構造そのものは、どの物件でも共通して当てはまります。

取得費の書類を長期保管しないと、減価償却の逆算根拠を示せなくなります。
取得費の書類を長期保管しないと、減価償却の逆算根拠を示せなくなります。
逆算

保有中の節税率と譲渡税率の差——得になるのは900万円超の層だけ

保有中の節税と、売却時の譲渡税を差し引きして、実際に得になるかどうかは、あなたの課税所得(所得控除後、税率をかける前の所得)によって変わります。

所得税・住民税の税率は、課税所得が上がるほど段階的に高くなります。課税所得900万円以下では税率33%、900万円超1,800万円以下では43%です。長期譲渡税率20.315%との差が十分に出るのは、税率43%が適用される課税所得900万円超の層だと私たちは考えています。

給与所得者であれば、課税所得900万円超はおおむね年収1,200万円前後が目安です。この水準に届かない場合、保有中の節税効果と譲渡税の差はそれほど大きくならず、節税目的だけで区分ワンルームを保有する意味は薄れます。

+ 補足

課税所得195万円以下では税率15%、330万円以下では20%、695万円以下では30%です。税率が低い層ほど、保有中の節税メリットは小さくなります。

年収が目安に届かないまま「節税になる」という営業トークだけで購入すると、出口で帳尻が合わなくなる可能性があります。

逆に言えば、課税所得900万円超の層にとっては、保有中の高い税率で節税し、売却時には長期譲渡税率20.315%で精算するという構図そのものは、条件次第で成立し得ます。ただしこれは節税という側面の話にすぎず、物件そのものの収益力とは別に判断すべき論点です。

混同注意

紛らわしい「相続の5年ルール」とは別物です

ここで、紛らわしい制度を整理しておきます。この記事で説明してきた5年ルールは、あくまで「譲渡所得税」の話です。似た名前で、まったく別の「相続税評価の5年ルール」も2026年度税制改正で導入されました。

2026年度税制改正では、相続開始前5年以内に取得した貸付用不動産(賃貸アパート・マンションなど)を、原則として取得価額の80%程度で評価する仕組みが導入されました。従来は60〜70%程度まで圧縮できていたため、圧縮幅は大きく縮まりました。

この改正は、不動産を使って相続税評価額を圧縮する手法を封じる、10年がかりの流れの延長線上にあります。次の図で、その系譜を整理します。

評価額圧縮を封じてきた10年の流れ2018年かぼちゃの馬車破産2021年国外中古建物規制2024年タワマン評価通達2026年度貸付用不動産5年ルール図5 不動産による相続税評価額の圧縮は、2018年以降段階的に封じられてきました。この5年ルールは、本文の譲渡所得の5年ルールとは別の制度です。

相続対策として区分ワンルームの購入を検討している場合、この5年ルールは、この記事の主題である譲渡所得の5年ルールとは別に、購入のタイミングそのものに影響します。両方の5年ルールを混同しないよう、注意してください。

2024年1月からはタワーマンションの相続税評価についても、市場価格との乖離を是正する通達が適用されています。相続を見据えた不動産購入は、評価額を圧縮する目的では成立しにくくなってきているというのが、この10年の流れから読み取れることです。

リスク

残債割れ物件は、そもそも売れない

そもそも売却価格がローンの残債を下回る「残債割れ」の状態では、税率の話をする以前に、売却自体が成立しにくくなります。

残債割れの場合、選択肢は大きく3つです。①差額を手持ち資金で埋めて完済する持ち出し完済 ②金融機関の合意を得て売却する任意売却 ③売らずに保有を続ける、の3つです。それぞれの損益分岐点を計算した記事で詳しく扱っていますので、あわせて確認してください。

保有を続ける選択肢を取る場合、団体信用生命保険(団信。ローン契約者に万一のことがあった場合に残債が弁済される保険)が付いていることが、心理的な支えになっているケースをよく見ます。団信を生命保険の代わりと考えることの妥当性は、掛け捨ての定期保険と比較した記事で検証していますので、こちらも参考にしてください。

残債割れの物件を、税率の有利・不利だけで判断するのは早計です。まずは残債と想定売却価格の差を確認することが、出口戦略の出発点になります。

任意売却では、金融機関に残債の一部が回収できない旨を事前に相談し、合意のうえで売却を進めます。無断で相場より大幅に安く売却してしまうと、後から金融機関との関係が悪化することもあるため、事前の相談を省かない手順を踏んでください。

高層マンションほど値上がりが目立ちますが、出口の税負担は別に計算が必要です。
高層マンションほど値上がりが目立ちますが、出口の税負担は別に計算が必要です。
リスク

サブリース物件は、解約してから出口を考える

サブリース契約(不動産会社が物件を一括で借り上げ、オーナーに賃料を保証する仕組み)が付いた物件は、出口の難易度がさらに上がります。

サブリース契約が残ったままだと、買主から見て賃料設定や契約条件が不透明になり、通常の売却より買い手がつきにくくなる傾向があります。売却を検討する前に、サブリース契約そのものを解約できないか、確認しておく価値があります。

サブリースは借地借家法32条やサブリース新法を根拠に解約できる場合があると、実務手順をまとめた記事で説明しています。解約したうえで実勢の賃料水準に戻してから売却するほうが、買い手からの評価が上がりやすいと私たちは考えています。

サブリース賃料が相場より高く設定されている物件ほど、解約後の賃料低下幅も大きくなりがちです。出口を考えるなら、サブリースなしの実質手残りで収支を再計算しておくべきです。

2020年に施行されたサブリース新法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)により、家賃保証の内容や減額の可能性について、契約前の説明義務が強化されました。ただし、すでに契約している物件については、この説明義務が遡って適用されるわけではない点にも注意が必要です。

判定

結局、出口まで見て検討していい物件とは

ここまで見てきた3つの視点をまとめると、区分ワンルームの出口戦略で確認すべき最低ラインは、次の3つだと私たちは考えています。

①売却予定日が、譲渡した年の1月1日時点で取得から5年を超えているか、事前にカレンダーで確認する。②デッドクロスを迎える時期を試算し、迎える前に売却するか、迎えたあとも耐えられる手元資金があるか確認する。③減価償却を取った分だけ譲渡益が膨らむことを踏まえ、保有中の節税額と譲渡税の増加額を通算して、トータルで得になっているか確認する。

✓ 結論

この3つを事前に試算できる物件であれば、出口まで見通したうえで検討していい物件だと私たちは考えています。試算できない、あるいは業者が試算を示さない物件は、慎重になるべきです。

出口戦略は、購入前に一度は自分の手で試算しておくべきテーマです。数字を並べるだけの説明に納得せず、あなた自身のカレンダーと税率表で検算する習慣を持ってください。

「不動産投資はやめとけ」という通説は、業者売りスキーム物件や高値掴みへの批判としては的を射ています。ただし、立地・価格・出口・数字という4条件を満たす物件まで一律に否定するのは、乱暴な一般化だと私たちは考えています。まずは疑い、数字で検証し、それでも条件を満たすなら検討する、という順番を崩さないでください。

よくある質問

5年ルールは売却日から数えればいいのですか

いいえ。売却日からではなく、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうかで判定します。実質的には、取得から6年目の1月1日以降に売却しないと長期譲渡にはなりません。取得から5年が過ぎた実感だけで売却すると、短期譲渡税率39.63%が適用され、想定より高い税負担になることがあります。

デッドクロスとは何ですか

デッドクロスとは、減価償却費が元金返済額を下回り、帳簿上は黒字なのに手元の現金が減っていく状態です。減価償却費は現金の支出を伴いませんが、元金返済は実際に現金が出ていきます。この2つの線が交差したあとは、利益に課税されながら現金は先に減っていくため、資金繰りに注意が必要です。

減価償却を多く取るほど得なのですか

保有中の節税効果だけを見ればそう見えますが、売却時には取得費が減価償却分だけ減り、譲渡所得(売却益)がその分膨らみます。差し引きで得になるのは、保有中の税率と長期譲渡税率20.315%の差が大きい層、目安として課税所得900万円超(税率43%)の方に限られると私たちは考えています。

残債割れの物件は売れないのですか

売却価格がローン残債を下回る状態でも、差額を手持ち資金で埋める持ち出し完済や、金融機関の合意を得る任意売却という選択肢があります。売れないわけではありませんが、通常の売却より手続きも資金負担も重くなります。まずは現在の残債と想定売却価格の差を確認することから始めてください。

サブリース契約がついた物件は売りにくいのですか

サブリース契約が残ったままだと、賃料設定や契約条件が買主から見えにくくなり、通常の売却より買い手がつきにくい傾向があります。借地借家法32条やサブリース新法を根拠に解約できる場合もあるため、売却前に解約の可否を確認し、実勢賃料に戻したうえで売り出す方法も検討する価値があります。

出口戦略はいつから考え始めればいいですか

私たちは購入を検討する段階から、5年ルールの判定日・デッドクロスの想定時期・減価償却累計による譲渡益の見込みまで試算しておくべきだと考えています。購入後に慌てて計算するのではなく、入口の段階で出口まで見通しておくことが、判断を誤らないための最低条件です。

デッドクロスはいつ来ますか?

知恵袋では「元金返済額が減価償却費を上回った時点」がデッドクロスの目安として繰り返し紹介されており、これは専門的に見ても妥当な説明です。ただし到来時期は、借入金利・返済期間・建物の構造による償却年数によって大きく変わるため、一律の年数では語れません。自分の返済予定表と減価償却のスケジュールを重ねて、両者が交差する時期を試算しておくことが欠かせません。

5年ルールはいつからカウントするのですか?

知恵袋でも誤解が多い論点です。5年ルールは「売却した日」から数えるのではなく、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうかで判定されます。つまり実質的には、取得から6年目の1月1日を過ぎてから売却しないと、長期譲渡(税率20.315%)ではなく短期譲渡(税率39.63%)が適用されてしまいます。売却時期を決める前に確認しておきたい点です。

参考にした一次情報 本記事の数値は、上記の一次情報にあたって確認しています。各数値には「いつ時点の、どの機関の数字か」を本文中に明記しました。編集部が独自に計算した数値には「筆者試算の目安」と付記しています。制度・金利は変動しますので、最終的な判断の前には必ず公式の最新情報をご確認ください。
まとめ

出口戦略は、購入前に語られることがほとんどない領域です。だからこそ、5年ルールの数え方、デッドクロスの仕組み、減価償却の逆算構造という3つを、自分の手で試算できるようにしておく価値があります。

短期譲渡39.63%と長期譲渡20.315%の差、帳簿と現金がずれていくデッドクロス、節税した分だけ膨らむ売却益——どれも売り手が積極的には説明しない数字です。これらを事前に把握したうえでなお条件を満たす物件だけが、検討に値すると私たちは考えています。

本サイトでは、節税の実態やDSCR・イールドギャップといった収益指標、残債割れやサブリースの実務対応についても別記事で扱っています。出口まで見通したうえで、ご自身の判断材料を増やしていただければと思います。

不動産投資リサーチ編集部(ふどうさんとうしリサーチへんしゅうぶ)/金融・不動産分野のリサーチ/メディア運営 私たちの専門は一つです。業者の販売資料を、公的な一次情報と突き合わせて検証すること。日本銀行の金利統計、東日本レインズの成約データ、日本不動産研究所の投資家調査、国税庁の通達、国土交通省の行政処分情報、各社のIR資料——売り手が語らない数字は、そのすべてが公開されています。ただ、誰も読んでいないだけです。銀行の審査部が物件をどう見ているのかを、投資家側の言葉に翻訳すること。それがこのサイトでやっていることです。
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