サブリースは解約できる。東京地裁の直近4判決が示した「勝ち筋」
- 2023年〜2025年の東京地裁4判決はすべてオーナー勝訴。多くのサイトが引く2019年判決1件だけでは見えない「勝ち筋」が、4判決を並べると浮かび上がる。
- 正当事由は「自己使用」の必要性がなくても認められ得る。ローン残債・逆ざや・売却の必要性という経済的な事情で足りるとした判決がある。
- 相手方(サブリース会社)の必要性は「転貸差益を得ることに尽きる」とされ、判決では月額8,000円〜5万185円という実額まで認定された。
- 立退料の目安は賃料の3〜6か月分(4判決からの帰納。法律上の基準ではなく判例上の目安)。契約書の解約条項があれば、その水準が上限の目安になる。
- 契約終了後はオーナーが転貸人の地位を引き継ぐため、入居者は解約の障害にならないと判決は評価している。
「サブリースは正当事由がないと解約できない」。この説明を聞いて、交渉を諦めてしまったオーナーは少なくないはずです。正当事由という言葉の抽象的な響きが、最初から交渉の芽を摘んでしまいます。
私たちは、不動産会社の販売資料を公的な一次情報と突き合わせて検証することを専門にしています。これまでに数十社分の販売資料と収支シミュレーションを読み比べ、Q&Aサイトに投稿された購入後の相談も継続的に読み込んできました。その立場から言えるのは、「正当事由が必要」という一言だけで思考を止めるのは早すぎるということです。
この記事では、2023年から2025年にかけて東京地方裁判所で言い渡された4件の判決を取り上げます。いずれもオーナーが勝訴しています。多くのサイトが引用するのは2019年の判決1件だけですが、直近の4判決を並べると、正当事由が認められるための「勝ち筋」が具体的な形で見えてきます。
あわせて、立退料の判例上の目安、サブリース新法が定める会社側の義務、そして実際に解約を進める際の実務手順まで、条文と判決文にもとづいて整理しました。
「サブリースは解約できない」という通説と、直近4判決の全体像
サブリース(特定賃貸借契約)は、オーナーが業者に建物を貸し、業者がそれを入居者へ転貸する賃貸借契約です。借地借家法が全面的に適用されるため、オーナー側からの解約には「正当事由」が必要とされています。この基本構造についてはサブリース解約の実務手順を整理した記事でも扱っています。
問題は、この「正当事由が必要」という一言だけが独り歩きしていることです。検索すると多くのサイトが2019年(令和元年)11月26日の東京地裁判決(オーナー敗訴)を引用し、「解約は難しい」という結論で終わっています。
しかし、2023年(令和5年)4月から2025年(令和7年)2月にかけて東京地裁が言い渡した4件の判決は、いずれもオーナーが勝訴しています。この4件を並べて検証することで、正当事由が認められるための共通点、つまり「勝ち筋」が見えてきます。
次の章から、正当事由という言葉の条文構造、そして4判決が実際に何を評価したのかを、一つずつ確認していきます。
サブリースを含め、不動産投資には様々なリスクが存在します。「正当事由が必要だから解約できない」という理解も、そうしたリスク認識の一つにすぎません。不動産投資の11のリスクを実際に起きる確率まで検証した記事もあわせてご覧ください。

借地借家法28条の構造——立退料は「補完事由」にすぎない
正当事由の根拠になっているのは借地借家法28条です。e-Gov法令検索で条文を確認すると、次のように定められています。
「建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない」(借地借家法28条)
条文を分解すると、正当事由の考慮要素は5つあります。①双方(オーナーと転借人を含む賃借人)の使用の必要性 ②従前の経過 ③利用状況 ④建物の現況 ⑤財産上の給付、つまり立退料の申出です。
この条文構造から読み取れる重要な点は、立退料は独立した要件ではなく、他の事情を補う「補完事由」にすぎないということです。立退料さえ払えば解約できるわけではなく、逆に立退料がなければ一切解約できないというものでもありません。使用の必要性という中心的な事情を、立退料が補う構造になっています。
この構造を理解しておくと、「正当事由=立退料の金額勝負」という単純化した理解から抜け出せます。次の章では、この①の「使用の必要性」について、4判決が実際にどう判断したかを見ていきます。
正当事由は「自己使用」でなくてよい——経済的必要性という切り口
「正当事由」と聞くと、多くの人は「自分がその部屋に住む必要がある」といった自己使用の事情を思い浮かべます。しかし、4判決を見ると、そのような典型的な自己使用の事情がなくても、正当事由は認められています。
2023年4月27日の東京地裁判決(判決①)では、オーナーは自宅購入のための住宅ローン事前審査を申し込みましたが、投資物件の残債があることを理由に否決されました。オーナーは残債を圧縮するために物件を売却したいが、サブリース付きのままでは相当に価格を下げないと売れないという事情を主張しました。
判決は、この事情について「典型的な『建物の使用を必要とする事情』とはいい難いものの、これに該当し得る事情」と明言しました。つまり、①ローン残債がある ②逆ざやである、あるいは売却の必要がある ③サブリース付きだと売却価格が下がる、という経済的な必要性で、正当事由の中心的な考慮要素になり得るということです。
この判断は、サブリース付き物件を持つ多くのオーナーにとって重要な意味を持ちます。「自分の部屋として使いたいわけではないから、正当事由は認められない」と最初から諦める必要はありません。物件の売却や資金繰りに関する経済的な事情も、正当事由の材料になり得るのです。

東京地裁の4判決を一覧で見る
4件の判決を、オーナー側の事情・相手方(サブリース会社)の必要性・立退料・結論という軸で整理します。
| 判決 | オーナー側の事情 | 相手方の転貸差益 | 立退料 | 結論 |
|---|---|---|---|---|
| ①令和5年4月27日 | 住宅ローン審査が投資物件の残債で否決。残債圧縮のため売却希望 | 差益の実額は不明。契約に3か月分での解約条項あり | 賃料6か月分(契約所定の2倍) | オーナー勝訴 |
| ②令和5年12月8日 | 新自宅ローンの条件で旧ローン完済を要求。残高2,795万円超 | 月額1万4,800円 | 賃料5か月分=67万6,000円 | オーナー勝訴・確定 |
| ③令和6年3月28日 | 57歳。就労不能の弟への仕送り、老後資金確保のため売却希望 | 月額5万0,185円 | 100万円(約3か月分) | オーナー勝訴 |
| ④令和7年2月21日 | 逆ざや状態。サブリース付きだと売却価格が下がる | 最高でも月額8,000円(一部期間マイナス) | 37万5,000円(賃料5か月分) | オーナー勝訴 |
次の図で、この4判決を時系列に並べます。
判決①は控訴審(東京高裁)で賃料3か月分相当での和解に至ったとされています。一審の水準がそのまま確定するとは限りませんが、4件とも一審段階でオーナーの主張が認められた事実に変わりはありません。
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- 価格帯は1,000万〜5,000万円程度、平均利回りは表面4%前後(同社公表値)
- 設立2002年/資本金9,000万円/宅建業免許 国土交通大臣(1)第10826号
注意 家賃保証(サブリース)は永久のものではありません。借地借家法32条1項により借上賃料が減額される場合があると、同社が公式に明記しています。
注意 面談特典の対象は年収・年齢・勤続年数・勤務先の条件を満たす方に限られます。条件は公式ページで必ずご確認ください。
上記はJPリターンズの公表値・公開情報にもとづく記載です。最新の条件は公式サイトでご確認ください。
相手の弱点は、相手の帳簿にある——転貸差益という数字
4判決に共通するもう一つの特徴があります。裁判所は、サブリース会社側の「使用の必要性」を、転貸差益(オーナーへの支払賃料と、入居者から受け取る賃料の差額)を得ることに尽きる、と評価しています。
そして重要なのは、この差益が実額で認定されている点です。判決②では月額1万4,800円、判決③では月額5万185円、判決④では最高でも月額8,000円で、令和5年4月以降はマイナスとなっていました。
判決③のサブリース会社は資本金6,000万円・売上47億円超・管理物件1,088件という規模の業者でしたが、8年7か月かけて回収した差益は計約51.7万円にとどまっていました。会社の規模と、その物件から得ている利益の大きさは別問題だということです。
次の図で、判決②③④が認定した転貸差益の月額を比較します。
つまり、正当事由を主張するオーナー側にとって、相手方の転貸差益がどれだけ小さいかを具体的な金額で示すことが、有力な材料になります。裁判所は、差益が小さいほど「サブリース会社の使用の必要性は低い」と評価する傾向が読み取れます。
差益の実額を主張・立証するには、賃貸借契約書に記載された借上げ賃料と、入居者との賃貸借契約における実際の家賃を突き合わせる必要があります。管理会社や仲介業者を通じて、入居者向けの募集条件を確認することが第一歩になります。
4判決から抽出した「勝ち筋」の定式
ここまで見てきた4判決を逆算すると、正当事由が認められやすい要素が浮かび上がります。次の図に整理します。
この定式は、あくまで4件の判決を並べて帰納的に導いたものであり、法律で定められた基準ではありません。それでも、何を主張し、何を準備すればよいかという実務上の指針にはなります。

立退料の目安と、契約書の解約条項が上限を画す仕組み
4判決の立退料は、100万円、67万6,000円、37万5,000円、賃料6か月分と、いずれもサブリース賃料の3〜6か月分の範囲におさまっています。
この「3〜6か月分」は法律上の基準ではありません。4判決という限られた事例から帰納した、判例上の目安にすぎません。個別の事案では、これより高くなることも低くなることもあり得ます。
特に注目すべきなのは判決①です。この契約書には「1年経過後は6か月予告+賃料3か月分の支払いで賃貸人が解約できる」という条項がありました。判決は、この条項の存在を理由に「それを超える利益は当然には期待できない」とし、契約所定の水準の2倍にあたる6か月分で足りると判断しました。
自分の契約書に、オーナー側からの解約条項とその金額が定められているかを確認することが、立退料を検討する際の第一手になります。契約書があらかじめ想定していた水準は、立退料の上限を画す材料として機能する可能性があります。
次の図で、判決②③④の立退料の実額を比較します。
一方で、判決①は「賃貸人から3か月分で解約できる条項がない場合に、どの程度の立退料が必要かは、この判決の射程外である」とも明言しています。契約書に解約条項がないケースについては、まだ明確な判例上の目安が確立していないという点は、正直に押さえておく必要があります。
入居者は障害にならない——転貸人の地位承継という論点
サブリースを解約すると、入居者の生活が脅かされるのではないか、という懸念を持つオーナーもいます。しかし、判決③はこの点についても明確な判断を示しています。
サブリース契約が終了すると、オーナーが転貸人(入居者との賃貸借契約における貸主)の地位を承継します。つまり、入居者から見れば、貸主がサブリース会社からオーナーに変わるだけで、賃貸借契約自体は継続します。
判決③は、この地位承継により入居者は不利益を受けないと明示的に評価しています。契約書に地位承継の条項が明記されていなくても、オーナーが承継を申し出れば足りるとされました。入居者の存在は、解約を妨げる決定的な事情にはならないということです。
物件を売却する際にサブリース付きだと価格が下がるという事情も、4判決の多くで正当事由の一部として考慮されています。出口戦略全体との関係については売れない理由と5年ルール・デッドクロスを整理した記事もあわせてご覧ください。
更新拒絶の手続きと、賃料減額特約が無効になる根拠
正当事由の中身とは別に、手続き面でも押さえるべきルールがあります。借地借家法26条1項は、更新拒絶の通知期限を次のように定めています。
期間満了の1年前から6か月前までに更新拒絶の通知をしなければ、契約は従前と同一の条件で法定更新されます(借地借家法26条1項)。通知は内容証明郵便・配達証明で送付し、いつ相手に届いたかを記録に残しておく必要があります。
また、サブリース契約でよく問題になるのが賃料の減額です。借地借家法32条1項は、当事者双方に賃料の増減請求権を認めていますが、ただし書きで認めているのは「一定期間、賃料を増額しない特約」のみです。「減額しない」という特約は条文上どこにも書かれていません。
最高裁平成15年10月21日判決(第三小法廷、民集57巻9号1213頁)は、32条1項は強行法規であり、賃料自動増額特約によってもその適用を排除できず、サブリース契約にも32条1項が適用されると判示しました。「賃料を減額しない」という特約は、この強行法規の前では無効と解されています。詳しくは「減額しない」特約が無効になる理由を整理した記事で扱っています。
同判決は、減額請求の当否や相当賃料額の判断において、当初賃料を決定した際の事情(賃料保証特約や事業者側の投下資本など)も衡平の見地から考慮すべきだとしています。減額請求は当然に認められるものではなく、双方の事情を総合的に見て判断される点にも注意してください。

サブリース新法の3義務——「正当事由の説明不足」は違反の可能性がある
2020年に施行された賃貸住宅管理業法(正式名称:賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)は、サブリース業者に3つの義務を課しています。
| 義務 | 条文 | 罰則 |
|---|---|---|
| ①誇大広告等の禁止 | 法28条 | 30万円以下の罰金(法44条) |
| ②不当な勧誘等の禁止 | 法29条1号 | 6月以下の懲役 または50万円以下の罰金(併科あり・法42条) |
| ③契約締結前の重要事項説明・書面交付 | 法30条 | 50万円以下の罰金(法43条) |
国土交通省は「不当な勧誘」の具体例として、「借地借家法によりオーナーからの解約には正当事由が必要であること」を伝えずにメリットだけ説明する行為を明示しています。将来の家賃減額リスク、契約期間中でもサブリース業者から解除できること、新築当初の免責期間を説明しない行為も同様です。契約時にこうした説明を受けていなかった場合、それ自体が法違反の可能性があります。
「原状回復費用はサブリース会社が全て負担する」と伝える行為も不実告知にあたります。また、午後9時〜午前8時の電話・訪問勧誘や、契約しない意思を示した相手への再勧誘は、1回でも違反とされています。
国土交通省には、こうした違反行為の申出制度が用意されています。契約時の説明に不備があったと感じる場合、正当事由をめぐる交渉と並行して、この制度の利用も選択肢になります。会社側の行政処分歴は行政処分歴を客観的に確認する方法を整理した記事で確認できます。
実務手順6ステップと、まだ判例がない論点
ここまでの内容を、実際に解約を進める際の手順として整理します。
①契約書の解約条項・更新条項を読む ②更新拒絶なら期間満了の1年前〜6か月前に内容証明郵便+配達証明で通知する ③正当事由の材料を積む(ローン残債の証明・逆ざやの証明・サブリース付きと無しの2本の査定書・相手方の転貸差益の額)④転貸人の地位承継を申し出る ⑤立退料を提示する(賃料3〜6か月分が判例上の目安)⑥法28条・29条違反があれば国交省の申出制度も併用する。
判決①は「賃貸人が3か月分の支払いで解約できる条項がない場合に、どの程度の立退料が必要かは、この判決の射程外である」と明言しています。契約書に解約条項がないケースの立退料水準は、まだ判例上の明確な目安が確立していません。この論点は今後の判断の積み重ねを待つ必要があります。
正当事由の材料集めには、ローンの返済予定表や、サブリース付き・なしの2本の査定書を用意する手間がかかります。残債の状況によっては、解約よりも先に売却そのものの損益分岐を確認しておくべき場合もあります。残債割れ物件の出口の損益分岐を計算した記事もあわせて確認してください。
「サブリースは解約できない」という通説は、2019年の判決1件だけを根拠にしています。しかし直近4判決は、経済的必要性と相手方の弱さを具体的に示せば、正当事由が認められる可能性があることを示しています。まずは契約書を読み直すことから始めてください。
よくある質問
解約できる可能性はあります。2023年から2025年にかけて東京地裁で言い渡された4件の判決は、いずれもオーナーが勝訴しています。ただし正当事由の有無は個別の事情によって判断されるため、常に解約できると断定できるわけではありません。
そうとは限りません。判決の一つは、住宅ローン残債の圧縮のために物件を売却する必要があるという経済的な事情について、「典型的な使用の必要性とはいい難いが、これに該当し得る事情」と評価しました。自己使用の予定がなくても、経済的必要性を具体的に示すことが交渉材料になります。
4件の判決では、サブリース賃料の3〜6か月分の範囲におさまっています。ただしこれは法律上の基準ではなく、判例上の目安です。契約書に解約条項と金額が定められている場合、その水準が上限の目安になった判決もあります。
判決の一つは、契約終了によりオーナーが転貸人の地位を承継するため、入居者は不利益を受けないと評価しています。地位承継の条項が契約書になくても、オーナーが承継を申し出れば足りるとされました。入居者の存在自体が解約を妨げる決定的な事情にはならないと考えられます。
借地借家法26条1項により、期間満了の1年前から6か月前までに通知する必要があります。この期間内に通知しないと、契約は従前と同じ条件で法定更新されます。通知は内容証明郵便と配達証明で送付し、記録を残しておくことをおすすめします。
最高裁平成15年10月21日判決は、賃料増減請求権を定めた借地借家法32条1項が強行法規であり、サブリース契約にも適用されると判示しています。ただし減額請求が当然に認められるわけではなく、周辺相場や契約時の事情など個別の状況を踏まえて判断されます。
問題になる可能性があります。国土交通省は、借地借家法上オーナーからの解約に正当事由が必要であることを伝えずにメリットだけ説明する行為を、賃貸住宅管理業法上の「不当な勧誘」の例として明示しています。説明がなかった場合、国交省の申出制度の利用も選択肢になります。
あります。判決の一つは、賃貸人が3か月分の支払いで解約できる条項が契約書にない場合、どの程度の立退料が必要かはこの判決の射程外であると明言しています。契約書に解約条項がないケースの立退料水準は、まだ判例上の明確な目安が確立していません。

