不動産投資の失敗事例10選と、「失敗率40.7%」という数字の出所を追ってみた

不動産投資の失敗事例10選と、「失敗率40.7%」という数字の出所を追ってみた 不動産投資の基礎と判断
不動産投資の基礎と判断

不動産投資の失敗事例10選ー「失敗率40.7%」という数字の出所を追ってみた

監修・執筆 不動産投資リサーチ編集部 金融・不動産分野のリサーチ/メディア運営/一次情報を突き合わせて、売り手の説明を検証しています
結論から先に。営業トークではなく、数字で判断できるように書いています。
この記事の結論(先に言います)
  • ネットで引用される「失敗率40.7%」は、出所を辿ると一次資料が確認できず、根拠として使うべきではない数字です
  • 失敗が発覚するタイミングは契約直後・2年後・5年後・10年後の4段階に整理できます
  • 失敗者の多くが、契約前に出口・数字・契約更新条件という3つの確認を怠っていました
  • 金利上昇や人口動態の変化のように構造的に防げない失敗もあり、これは受け入れるしかありません
  • 不動産業向け融資残高は前年比+7.8%で伸びる一方、日銀は2026年度に審査体制の点検強化を打ち出しています

「不動産投資 失敗 事例」で検索したあなたは、おそらくすでに「失敗率40.7%」という数字を目にしていると思います。かなり物々しい数字なので、契約を検討していた気持ちが一気に萎える人もいるでしょう。

私たちは、不動産会社の販売資料を公的な一次情報と突き合わせて検証することを専門にしています。これまでに数十社分の販売資料と収支シミュレーションを読み比べ、Q&Aサイトに投稿された購入後の相談も継続的に読み込んできました。その立場から、まずこの数字の出所を実際に辿ってみました。結論は本文で詳しく書きますが、根拠として使うのは避けたほうがよい数字です。

この記事では、数字の真偽よりも実務的なテーマとして、失敗が発覚するタイミングを契約直後・2年後・5年後・10年後の4段階に整理し、失敗した人が共通して怠っていた3つの確認を逆算します。そのうえで、失敗を「防げた失敗」と「構造的に防げない失敗」に分けて考えます。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・不動産の取得を勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。掲載している数値・制度は執筆時点(2026年7月)のもので、最新の情報は各社の公式サイト・公的機関の一次情報をご確認ください。また本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含みます。
この記事の更新履歴
  • 公開。すべての数値を一次情報にあたって確認し、時点と出典機関を明記しました。
  • 日本銀行が2026年6月の金融政策決定会合で政策金利を0.75%から1.00%程度へ引き上げたこと、および短期プライムレートの2.375%への改定(2026年8月3日予定)を反映しました。
検証

「失敗率40.7%」という数字の出所を追ってみた

不動産投資について調べ始めると、かなりの確率で「失敗率40.7%」という数字に行き当たります。書籍のタイトルや記事の見出しに繰り返し使われており、一見すると説得力のある数字に見えます。

私たちは、業者の販売資料を公的な一次情報と突き合わせて検証する立場から、この数字の一次資料を実際に探してみました。どの調査機関が、いつ、何人を対象に行った調査で「40.7%」という結果が出たのか、明確にたどり着ける情報源は確認できませんでした。

孫引きが繰り返されるうちに、出所のあいまいな数字だけが独り歩きしている状態だというのが、私たちの率直な印象です。数字自体が間違っているとまでは断定できませんが、根拠として引用するには心もとない状態にあります。

! 注意

本記事では「失敗率40.7%」という数字そのものを根拠には使いません。かわりに、出典が明確な実データ(融資残高の推移、公的統計、実際の訴訟事例など)から、失敗の実態を整理していきます。

数字の真偽はさておき、「不動産投資はやめとけ」という通説は、地方・高値掴み・業者売りスキーム物件に対しては概ね正しいというのが私たちの実務上の実感です。問題は、その通説がどんな物件にも一律に当てはまるわけではない点にあります。

実際、不動産業向けの融資残高は2025年12月時点で約115兆円、前年同月比+7.8%と伸びが続いています(日本銀行)。融資が緩みやすい局面では、数字を検証しないまま契約してしまう投資家も増えます。次の章では、失敗を「防げた失敗」と「構造的に防げない失敗」に分けて整理します。

高値掴みに気づくのは契約の瞬間ではなく、たいてい数か月後、冷静になった頃だという実務上の実感がある。
高値掴みに気づくのは契約の瞬間ではなく、たいてい数か月後、冷静になった頃だという実務上の実感がある。
判定

「防げた失敗」と「構造的に防げない失敗」を分ける

失敗事例を集めたサイトの多くは、個別のエピソードを並べるだけで終わっています。しかし購入後の相談を読み込んできた実感として、失敗には大きく2種類あります。

一つは、契約前に数字を確認していれば避けられた失敗です。もう一つは、金利や人口動態のように、個人の努力だけでは防ぎようがない構造的な失敗です。この2つを混同すると、「不動産投資は全部だめ」という乱暴な結論にも、「自分は大丈夫」という根拠のない楽観にも転びやすくなります。

次の図で、両者の違いを整理してみます。

防げた失敗構造的に防げない失敗・相場より高値での契約・サブリース条件の未確認・DSCR未計算の融資・フラット35の目的外使用・金利そのものの上昇・人口動態の変化・修繕費の高騰・相続税制などの法改正図1 同じ「失敗」でも、事前の確認で防げたものと、個人の努力では防ぎきれないものは分けて考える必要がある。

防げた失敗の代表例は、相場より高い価格での契約、サブリースの更新条件を確認しないままの契約、返済余裕率(DSCR。純営業収益÷年間ローン返済額)を計算しないままの融資、そしてフラット35の目的外使用です。フラット35は自己居住用に限定された住宅ローンで、投資用に使うのは契約違反にあたります。

一方、構造的に防げない失敗は、日本銀行が2026年6月に政策金利を1.00%程度まで引き上げたような金利そのものの変化、東京都の転入超過が2025年に65,219人へと4年ぶりに縮小した(総務省統計局)ような人口動態の変化、資材・人件費高騰による修繕費の増加などです。これらは投資家個人の注意深さだけでは避けられません。だからこそ、防げる部分だけは確実に潰しておく必要があります。

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時系列

失敗が発覚するタイミングは4段階に整理できる

収支計画書を審査していて気づくのは、不動産投資の失敗は一度に発覚するのではなく、決まったタイミングで段階的に表面化するという点です。私たちの経験では、契約直後・2年後・5年後・10年後の4つの節目に集中しています。

次の図は、その4段階を時系列で示したものです。

1234契約直後2年後5年後10年後高値掴みに気づく重要事項の見落とし賃料減額の打診借地借家法32条減価償却の終了税負担の急増大規模修繕費用出口の判断図2 失敗は一度に起きるのではなく、契約直後・2年後・5年後・10年後という節目で段階的に表面化する。

契約直後は、価格や重要事項説明の確認不足が原因になります。2年後は、サブリース契約の最初の更新時期にあたり、賃料の見直しが起こりやすいタイミングです。5年後は、減価償却費が縮小・終了し、それまで見えなかった税負担とキャッシュフローの悪化が同時に表面化します。10年後は、大規模修繕という高額な支出と、売却という出口の判断が重なる時期です。

次の章から、それぞれの段階で実際に何が起きるのかを順番に見ていきます。どの段階も、事前に数字を確認していれば心構えができていた、という点は共通しています。

空室のまま放置された一室が映すのは、需要の消失以上に出口を確認しなかった甘さである。
空室のまま放置された一室が映すのは、需要の消失以上に出口を確認しなかった甘さである。
契約直後

契約直後に発覚する失敗ー高値掴みとフラット35の不正利用

契約直後に発覚する失敗の典型は、相場より高い価格で買ってしまっていたと後から気づくパターンです。東京23区の中古ワンルームの成約価格は、2013年上期の約1,300万円から2024年上期には約2,400万円と、約11年でおよそ2倍に上昇しました(東日本レインズ)。相場そのものが上がっているため、価格の高さだけでは高値掴みかどうか判断できません。

問題は、業者が提示する利回りや価格が相場のどの水準にあるかを確認しないまま契約してしまうことです。ワンルーム投資が「買った瞬間に2割損」と言われる仕組みは別記事で分解していますが、これは新築時のプレミアムが取引直後に剥落する現象で、多くの人が契約直後に初めて実感します。

もう一つの典型が、フラット35の目的外使用です。フラット35は自己居住用の住宅ローンで、投資用物件に使うのは契約違反にあたります。2019年には147件の不正利用が発覚しており、発覚した場合は残債務の一括返済を求められ、詐欺罪に問われる可能性も指摘されています。「今だけ金利が低い方法がある」という営業トークには注意が必要です。

⚠ 警告

「団体信用生命保険があるから生命保険の代わりになる」という説明も、契約直後によく聞く営業トークの一つです。掛け捨ての定期保険と実額で比較すると差が出るケースが多く、団信と生命保険の比較は別記事で数字を出して検証しています

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注意 家賃保証(サブリース)は永久のものではありません。借地借家法32条1項により借上賃料が減額される場合があると、同社が公式に明記しています。

注意 面談特典の対象は年収・年齢・勤続年数・勤務先の条件を満たす方に限られます。条件は公式ページで必ずご確認ください。

上記はJPリターンズの公表値・公開情報にもとづく記載です。最新の条件は公式サイトでご確認ください。

2年後

2年後の壁ーサブリース改定という現実

サブリース(家賃保証)契約の多くは、当初の期間が過ぎると2年ごとに賃料が見直される仕組みになっています。「契約から10年間は家賃固定」という説明をする会社もありますが、実務上は契約から2年後の最初の更新時に、想定より早く減額の打診を受けたという相談が少なくありません。

サブリース契約でも、借地借家法32条1項に基づき、借上げ賃料は減額される場合があります。大手の現物系の会社も、公式にこの点を明記しています。「家賃保証だから空室でも収入は変わらない」という理解は正確ではなく、保証されているのは賃料の支払いそのものであって、金額の固定ではありません。

2020年に施行されたいわゆるサブリース新法は、勧誘時の説明義務や誇大広告の禁止を定めていますが、既に締結した契約の減額を止める効力はありません。サブリース契約を解約する際の実務手順は、借地借家法32条とサブリース新法の観点から別記事で整理しています

! 注意

金利の上昇も2年後の負担感を強めます。借入3,000万円・35年・元利均等の条件で、金利が2.0%から3.0%に上がると、毎月の返済は約99,400円から約115,500円へ、+1%あたり月約16,100円増える計算です(筆者試算の目安)。投資用ローンには住宅ローンにある「5年ルール」「125%ルール」のような返済急変の緩和措置がないことが多く、金利上昇はほぼそのまま返済額に反映されます。

! 知恵袋の生の声

Yahoo!知恵袋の「不動産投資 失敗」関連のスレッドには、具体的な数字を挙げた相談が目立ちます。要点を要約すると、次のような傾向が繰り返し見られます。

  • 「購入から2年が経ったのに、ローン残高が100万円ほどしか減っていない」という趣旨の相談が繰り返し投稿されています。返済表を見返して初めて元金の減り方の遅さに気づいた、という声が多いのが特徴です。
  • 「家族が契約書に署名してしまった後で発覚した」という相談も一定数あります。本人の意思表示で契約が成立している以上、後から親族が一方的に解除するのは難しいという趣旨の回答が多く、契約書と重要事項説明書を確認したうえで専門家に相談するよう勧める回答が目立ちます。
  • 売却や損切りの段階になって、「損失を給与所得と損益通算できると思っていたのに、実際にはできなかった」という誤解に基づく相談も見られます。通算できるのは同じ年に他の不動産所得で利益が出ている場合に限られるため、想定より税負担が重くなったという声が寄せられています。

いずれも当事者の体験談であり、事情は個別に異なります。それでも同じパターンの相談が繰り返される背景には、購入前の説明不足と、契約後の仕組みへの理解不足という共通の問題があると私たちは見ています。

5年後

5年後の壁ー減価償却終了とキャッシュフロー悪化

区分マンションの建物設備部分などは、法定耐用年数に応じて数年で減価償却が終わることがあります。減価償却費は経費として所得を圧縮する効果があるため、それが縮小・終了すると、家賃収入は変わらないのに帳簿上の利益と納税額が急に増えるという現象が起きます。

このタイミングで慌てて売却を検討する人もいますが、保有期間の数え方には注意が必要です。譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうかで税率が変わり、短期譲渡は39.63%、長期譲渡は20.315%です。実質的には取得から6年目の1月1日以降でないと長期譲渡になりません。5年後に急いで売ると、税率面でさらに不利になることがあります。

加えて、譲渡所得は譲渡価額から取得費(取得価額から減価償却累計額を差し引いた額)を差し引いて計算されます。保有中に減価償却で圧縮した分だけ取得費が減るため、売却益が膨らみやすくなります。保有中に節税した効果の一部は、売却時の譲渡所得税として戻ってくる構造だと理解しておく必要があります。

+ 補足

2026年度税制改正では、相続開始前5年以内に取得した貸付用不動産の評価が、原則として取得価額の80%(通常の取引価額)とされることになりました。従来は評価額を60〜70%圧縮できていたため、駆け込みで区分マンションを買って相続税を圧縮するという手法は、事実上効果が乏しくなっています。

「税金が減るから」という理由だけで契約した人ほど、5年後にこの壁にぶつかりやすいというのが実務上の印象です。

5年後に届く納税通知書の増額こそが、減価償却終了という壁が来たことを知らせる合図になる。
5年後に届く納税通知書の増額こそが、減価償却終了という壁が来たことを知らせる合図になる。
10年後

10年後の壁ー大規模修繕費と出口の難しさ

10年前後は、多くの区分マンションで最初の大規模修繕やその積立不足が表面化する時期です。修繕積立金は当初低く設定され、段階的に引き上げられる方式(段階増額積立方式)を採る物件が多く、当初の説明より負担が重くなっているケースがあります。

同時に、10年前後は売却という出口を検討し始める人が増えるタイミングでもあります。しかし出口の状況は、契約時点から変化しています。東京都の転入超過は2025年に65,219人と、前年より約1万4,000人減少し、4年ぶりの縮小となりました(総務省統計局)。東京圏(1都3県)全体でも123,534人と前年比▲12,309人です。外国人については前年の8,722人の転入超過から378人の転出超過へと反転しており、家賃・物価高騰の影響が指摘されています。

需要そのものがなくなったわけではありません。20〜24歳は57,263人の転入超過が続いており、若年単身層の流入がワンルーム需要を支えている面もあります。ただし、契約時に前提としていた「人口は増え続ける」という単純な想定が、そのまま10年後にも通用するとは限りません。

住宅ローンの残債が売却価格を上回る「残債割れ」に陥った場合の出口は、持ち出し完済・任意売却・保有継続の3パターンに分けて別記事で損益分岐を計算しています。10年という節目で初めて出口の難しさに気づくのではなく、契約前にある程度の見通しを持っておくことが、次章の「逆算」につながります。

逆算

失敗者が共通して怠った3つの確認

ここまで見てきた4つの段階の失敗事例を振り返ると、発覚のタイミングは違っても、契約前に怠っていたことには共通点がありました。私たちが販売資料と購入後の相談を突き合わせて確認してきた限り、大きく3つに集約できます。

次の図は、その3つの確認を整理したものです。

確認1 出口確認2 数字確認3 契約条件将来売れる場所か人口動態を確認転入超過の推移相場データで検証表面利回りだけでなく実質利回り・NOIDSCR1.3が目安イールドギャップサブリースの更新借地借家法32条金利上昇時の耐性重要事項説明を精読図3 出口・数字・契約条件という3つの確認を怠らなければ、防げた失敗の大部分は避けられたはずである。

1つ目は「出口」の確認です。将来売れる場所・価格かどうかを、人口動態や成約データを使って検証していない人が目立ちます。2つ目は「数字」の確認です。表面利回りだけを見て、実質利回りやNOI利回り(純営業収益÷物件価格)、返済余裕率(DSCR)まで計算していないケースです。金融機関の一般的な目安では、DSCRが1.3を下回る物件には慎重であるべきとされています。3つ目は「契約更新条件」の確認です。サブリースであれば借地借家法32条による減額の可能性、投資用ローンであれば金利上昇時の返済急変への耐性を、契約前に読み込んでいないケースです。

4つの時期と3つの確認の対応関係を、次の表に整理しました。

時期表面化した失敗怠っていた確認
契約直後高値掴み・フラット35の目的外使用出口・契約条件
2年後サブリースの賃料減額契約更新条件
5年後減価償却終了による税負担増数字(実質利回り・DSCR)
10年後大規模修繕費用・出口の難しさ出口
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✓ 結論

この3つは、いずれも契約前に確認可能な情報です。逆に言えば、この3つさえ潰しておけば、「防げた失敗」の大部分は避けられるはずだというのが、販売資料と購入後の相談を突き合わせてきた私たちの実感です。

投資用ローンを先に組むと、住宅ローンの返済比率にその返済額が丸ごと算入され、マイホームが買えなくなることがある点も、別記事で数字を使って計算しています。数字の確認を怠ると、投資そのものだけでなく、その後の人生設計にも影響が及びます。

セミナーは知識を学ぶ場ではなく、営業担当者の本音を見極める面接の場だと捉えるべきである。
セミナーは知識を学ぶ場ではなく、営業担当者の本音を見極める面接の場だと捉えるべきである。
事例

「みんなで大家さん」訴訟に見る、構造的な失敗の教訓

個人の確認不足だけでは説明しきれない失敗の実例として、不動産投資案件としては過去最大規模とされる集団訴訟に触れておきます。「みんなで大家さん」を販売する都市綜研インベストファンドは、2024年6月17日に東京都・大阪府から不動産特定共同事業法に基づく業務停止命令(30日間)を受けました。「成田16号」という案件で、開発許可を取得していない土地が対象不動産に含まれていたのに、説明が不十分だったことが理由です。

その後、2025年7月には成田シリーズの分配金支払いが停止し、2026年2月には計2,500人・約230億円規模の集団訴訟に発展しました。2026年3月26日には大阪地裁が出資金全額返還を命じる判決を出し、2026年6月5日にも別の訴訟で84人・約4億5,500万円の返還を命じる判決が出ています。

この事例が示すのは、投資家個人がどれだけ数字を確認しても、開発許可の有無のような情報が説明段階で開示されていなければ、リスクを見抜くことは難しいという事実です。優先劣後方式(劣後出資割合。物件価格が何%下落するまで投資家の元本が守られるかを示す仕組み)についても、非開示の商品や、劣後出資そのものがない商品が存在します。優先劣後は元本を保証する仕組みではなく、開示情報が少ない商品ほど、事前確認の限界も大きくなります。

⚠ 警告

不動産業向け融資残高は2025年12月時点で約115兆円、前年同月比+7.8%と伸びが続いています(日本銀行)。一方で日本銀行は2026年度の考査方針で、不動産業向け貸出の審査・管理体制を重点的に点検すると明記しており、2026〜2027年に投資用ローンの審査が再び締まるシグナルとも読めます。融資が緩む局面ほど、開示情報の薄い商品や高値の物件が市場に出回りやすくなる点には注意が必要です。

診断

あなたは「防げた失敗」を避けられるか

ここまでの整理を踏まえると、これから物件やクラウドファンディング商品を検討する際に、最低限確認しておきたい項目が見えてきます。次の図は、簡単な自己診断の流れです。

都心・駅近(徒歩10分以内)か検討を一旦停止いいえはい数字(DSCR等)を計算したか計算して再検討いいえはい出口(売却)の相場を確認したか出口確認が先いいえはい検討に進んでよい条件がそろっている図4 立地・数字・出口の3つを順に確認し、途中でつまずくなら、そこが今のあなたの課題になる。

この診断で確認が不十分だと分かった場合、その場で契約を決断する必要はありません。不動産投資セミナーには、物件を売ることが目的の会社と、物件を売らずに収支計算や融資の仕組みを教えることを目的にしたスクールがあり、その違いは別記事で比較しています。前者のセミナーは、参加者を「教える」場というより、営業担当者を見極める「面接」の場だと捉えたほうが実態に近いというのが私たちの見立てです。

数字を自分で計算できるようになってから物件を検討するのと、営業担当者の説明をそのまま信じて契約するのとでは、5年後・10年後に直面する現実が変わってきます。焦って契約する必要はありません。まず自分の手で、出口・数字・契約条件の3つを確認できるようになることが、遠回りに見えて実は最短の防御策だというのが、販売資料を検証し続けてきた私たちの結論です。

逆に、都心・駅近で相場との乖離が小さく、DSCRやイールドギャップまで確認した上で、なお条件を満たす物件に出会えたのであれば、それは検討に値する候補になり得ます。焦らず、しかし数字から目をそらさずに判断してください。

よくある質問

「不動産投資 失敗率40.7%」という数字は信頼できますか。

私たちが確認した範囲では、この数字の一次資料(調査機関・調査年・調査対象人数)にたどり着ける情報源は見当たりませんでした。孫引きが繰り返される中で数字だけが独り歩きしている可能性が高く、根拠として使うことは避けたほうがよいと考えています。実態を知るには、不動産業向け融資残高の伸びや訴訟事例など、出典が明確なデータを見るほうが確実です。

不動産投資の失敗は、契約から何年目に一番多く発覚しますか。

一つの時期に集中するというより、契約直後・2年後・5年後・10年後という4つの節目で、それぞれ異なる種類の問題が表面化する傾向があります。契約直後は価格や契約内容の確認不足、2年後はサブリース改定、5年後は減価償却終了による税負担、10年後は大規模修繕と出口の判断です。

サブリース(家賃保証)契約なら空室でも安心できますか。

保証されているのは賃料の支払いそのものであって、金額の固定ではありません。借地借家法32条1項に基づき、借上げ賃料は減額される場合があります。大手の現物系会社もこの点を公式に明記しており、「家賃が一切変わらない」という理解は正確ではありません。

DSCRとは何ですか。どのくらいの数値を目安にすればよいですか。

DSCR(返済余裕率)は、純営業収益を年間ローン返済額で割って求める指標です。金融機関の一般的な目安として、1.3を下回る物件には慎重であるべきとされています。表面利回りだけでなく、この数値まで確認しておくことが「防げた失敗」を避ける近道になります。

フラット35を投資用物件に使うとどうなりますか。

フラット35は自己居住用に限定された住宅ローンで、投資用に使うのは契約違反にあたります。2019年には147件の不正利用が発覚しており、発覚した場合は残債務の一括返済を求められ、詐欺罪に問われる可能性も指摘されています。「今だけ使える方法」といった営業トークには注意が必要です。

これから物件やクラウドファンディング商品を検討する場合、何から始めればよいですか。

いきなり契約を決める前に、出口・数字・契約更新条件の3つを自分で確認できる状態にしておくことをお勧めします。物件を売ることを目的としないスクールで収支計算や融資の基礎を学んでから、都心・駅近など条件を絞った資料請求に進むという順番のほうが、焦らずに判断できます。

買って2年で元金が100万円しか減っていません。これは普通ですか?

元利均等返済は返済額に占める利息の割合が当初大きく、元金の減りは緩やかになります。借入条件によっては、返済開始から数年間の年間元金返済額が数十万円程度にとどまることも珍しくありません(筆者試算の目安)。ですから100万円という数字自体は、特別に異常な数字ではありません。重要なのは、契約時の返済シミュレーションと一致しているかどうかです。想定より遅ければ、借入条件そのものを見直す材料になります。

家族がワンルーム投資を契約しました。今から止められますか?

不動産の売買契約は、原則として契約当事者本人の意思表示によって成立します。そのため、後から親族が一方的に解除することは基本的にできません。ただし、契約時の説明に宅建業法が禁じる断定的判断の提供や不実告知があった場合は、消費生活センターや弁護士への相談によって交渉の余地が生まれることもあります。まずは契約書と重要事項説明書の内容を確認することから始めてください。

参考にした一次情報 本記事の数値は、上記の一次情報にあたって確認しています。各数値には「いつ時点の、どの機関の数字か」を本文中に明記しました。編集部が独自に計算した数値には「筆者試算の目安」と付記しています。制度・金利は変動しますので、最終的な判断の前には必ず公式の最新情報をご確認ください。
まとめ

ここまで、「失敗率40.7%」という数字の出所を追うところから始め、契約直後・2年後・5年後・10年後という4つの節目で何が起きるかを見てきました。数字そのものの真偽よりも重要なのは、失敗の多くが「防げた失敗」であり、出口・数字・契約更新条件という3つの確認さえ怠らなければ、その大部分は事前に避けられたという事実です。

一方で、金利や人口動態のように、個人の努力だけでは防ぎようがない構造的な要因もあります。これらは受け入れた上で、なお条件を満たす物件かどうかを数字で判断するしかありません。都心・駅近で相場との乖離が小さく、DSCRやイールドギャップも許容できる水準にある物件は、検討に値する候補になり得ます。

焦って契約する必要はありません。まずは自分の手で数字を確認できるようになること。それが、数十社分の販売資料を一次情報と突き合わせて検証してきた私たちから、あなたへのいちばん実務的な提案です。

不動産投資リサーチ編集部(ふどうさんとうしリサーチへんしゅうぶ)/金融・不動産分野のリサーチ/メディア運営 私たちの専門は一つです。業者の販売資料を、公的な一次情報と突き合わせて検証すること。日本銀行の金利統計、東日本レインズの成約データ、日本不動産研究所の投資家調査、国税庁の通達、国土交通省の行政処分情報、各社のIR資料——売り手が語らない数字は、そのすべてが公開されています。ただ、誰も読んでいないだけです。銀行の審査部が物件をどう見ているのかを、投資家側の言葉に翻訳すること。それがこのサイトでやっていることです。
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