自己資金500万・年収700万なら、区分と一棟どっちが得か【同一条件シミュレーション】

自己資金500万・年収700万なら、区分と一棟どっちが得か【同一条件シミュレーション】 選び方・会社比較・少額投資
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自己資金500万・年収700万なら、区分一棟どっちが得か【同一条件シミュレーション】

監修・執筆 不動産投資リサーチ編集部 金融・不動産分野のリサーチ/メディア運営/一次情報を突き合わせて、売り手の説明を検証しています
結論から先に。営業トークではなく、数字で判断できるように書いています。
この記事の結論(先に言います)
  • 自己資金500万・年収700万の同一条件なら、10年累計の手残りは一棟が895万円、区分は−10万円という結果に(筆者試算の目安)。
  • 区分マンションは1戸しかなく、空室率は0%か100%の2択。分散が効かない構造です。
  • 一棟8戸なら2室空室でもDSCRは1.26を維持。区分は満室でも1.07止まりです(筆者試算の目安)。
  • 一棟の価値の本体は建物でなく土地値。公示地価2026(23区住宅地)は前年比+9.0%という水準です。
  • 区分所有の敷地権は持分が小さく、単独では更地として売れません。出口はほぼ1つに絞られます。

「区分マンションは手軽だが儲からない」「一棟アパートは儲かるがリスクが高い」。この手の比較を、私たちはこれまで数えきれないほど目にしてきました。ですがそのほとんどは、自己資金も年収も条件を揃えないまま、印象だけで語られています。

私たちは、不動産会社の販売資料を公的な一次情報と突き合わせて検証することを専門にしています。これまでに数十社分の販売資料と収支シミュレーションを読み比べ、Q&Aサイトに投稿された購入後の相談も継続的に読み込んできました。その経験から言えるのは、条件を揃えない比較には意味がないということです。

この記事では、自己資金500万円・年収700万円という同じ条件を、区分マンション1戸と一棟アパート8戸の両方に当てはめ、10年後の手残りとバランスシートを並べて試算します。数字はすべて筆者が独自に組み立てた前提に基づく「筆者試算の目安」であり、実在の物件の収支を保証するものではありません。

あわせて、区分特有の空室構造の弱さと、一棟が持つ「土地値」という出口の広さも検証します。定性論では語られにくい、この2つの構造を理解しないまま物件を選ぶ人が、想像以上に多いというのが実感です。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・不動産の取得を勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。掲載している数値・制度は執筆時点(2026年7月)のもので、最新の情報は各社の公式サイト・公的機関の一次情報をご確認ください。また本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含みます。
この記事の更新履歴
  • 公開。すべての数値を一次情報にあたって確認し、時点と出典機関を明記しました。
  • 日本不動産研究所「第54回 不動産投資家調査」(2026年4月現在・同年5月公表)の期待利回りを反映しました。東京・城南のワンルームタイプは3.6%で、前期比0.1ポイント低下しています。
  • 日本銀行が2026年6月の金融政策決定会合で政策金利を0.75%から1.00%程度へ引き上げたこと、および短期プライムレートの2.375%への改定(2026年8月3日予定)を反映しました。
前提

「区分か一棟か」を定性的に語っても答えは出ない

「区分マンションは手軽だが儲からない」「一棟アパートは儲かるがリスクが高い」。こうした比較を、私たちはこれまで数えきれないほど目にしてきました。ですがこの手の比較のほとんどは、自己資金も年収も条件を揃えないまま、印象だけで語られています。「不動産投資はやめとけ」という通説にも例外はあると考えている立場からすると、条件を揃えない比較には意味がないと言わざるを得ません。

この記事で固定する条件

この記事では、自己資金500万円・年収700万円という同じ条件を、区分マンション1戸と一棟アパート8戸の両方に当てはめ、10年後の手残りとバランスシートを並べて試算します。数字はすべて筆者が独自に組み立てた前提に基づく筆者試算の目安であり、実在の物件の収支を保証するものではありません。

あわせて、区分特有の物理的な弱点と、一棟特有の出口の広さという、定性論では語られにくい2つの構造も検証します。数十社分の販売資料と収支シミュレーションを読み比べてきた経験から言えば、この2つの構造を理解しないまま物件を選ぶ人が、想像以上に多いというのが実感です。

立地・価格・出口・数字という4条件で物件をふるいにかける、というのが本サイトの一貫した立場です。区分か一棟かという選択も、この4条件のどこで差がつくのかを具体的に数字で示さない限り、単なる好みの話に終わってしまいます。

白と青の外観が目を引くこの建物も、価値の本体は建物でなく足元の土地にあるという視点が出口を広げます。
白と青の外観が目を引くこの建物も、価値の本体は建物でなく足元の土地にあるという視点が出口を広げます。
試算

シミュレーションの前提条件—自己資金500万・年収700万を固定する

まず、この試算の共通条件を固定します。自己資金500万円、年収700万円、借入期間35年、金利2.4%(短期プライムレート2.375%に連動する目安)としました。

区分と一棟、それぞれの物件条件

区分マンションは、東京23区の中古ワンルームを想定し、価格2,500万円・想定家賃月9.5万円としました(23区ワンルーム成約価格や首都圏中古表面利回りの目安を踏まえた筆者試算)。自己資金500万円を入れると、借入は2,000万円、自己資金比率は20%になります。

一棟アパートは、8戸・価格5,000万円・満室想定家賃合計月33.3万円(1戸あたり月4.2万円)としました。自己資金500万円を入れると、借入は4,500万円、自己資金比率は10%です。次の図で、この2つの初期条件を並べてみます。

区分マンション1戸価格 2,500万円自己資金 500万円(20%)借入 2,000万円金利 2.4%(目安)表面利回り 4.56%DSCR(満室) 1.07戸数 1戸空室=収入ゼロ一棟アパート8戸価格 5,000万円自己資金 500万円(10%)借入 4,500万円金利 2.4%(目安)表面利回り 8.0%DSCR(満室) 1.68戸数 8戸空室でも他戸から収入図1 自己資金は同じ500万円でも、借入額・戸数・DSCRは大きく異なります(筆者試算の目安)。

自己資金は同じ500万円でも、一棟は借入額が2.25倍に膨らみます。事件後に標準化した融資基準では、物件価格の2〜3割程度の自己資金を求められることが多いとされ、一棟側の自己資金比率10%はこの目安をやや下回ります。実際の審査では、この差を年収や属性、担保評価で補う必要が出てくる可能性があります。

物件価格の水準についても補足しておきます。区分の2,500万円は東京23区中古ワンルームの成約価格帯を、一棟の5,000万円は首都圏の中古アパートで土地値がある程度出やすい価格帯を、それぞれ想定した筆者試算の目安です。実際にはこの前後にもっと幅のある価格帯が存在します。

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試算

区分マンション1戸の収支—表面4.6%の内側にある薄い手残り

区分マンションの表面利回りは、家賃114万円(月9.5万円)÷価格2,500万円で4.56%です。ここから管理費・修繕積立金・固定資産税等の運営費(年間23万円程度、筆者試算の目安)を引くと、NOI(純営業収益)は91万円、NOI利回りは3.64%まで下がります。

借入2,000万円・35年・金利2.4%の年間返済額は約84.7万円です(筆者試算の目安。共通の返済額シミュレーションを按分して算出)。DSCR(返済余裕率)は91万円÷84.7万円で1.07。金融機関が目安とするDSCR1.3を、満室であっても下回っています。

⚠ 警告

満室時点でDSCRが1.3を下回る物件は、家賃下落や空室が1か月でも重なれば、返済に窮する可能性があります。

年間の手残りキャッシュフローは、91万円から84.7万円を引いた6.3万円(筆者試算の目安)。月あたりに直すと5,000円程度しか残らない計算です。表面利回り4.56%という数字だけを見て検討を進めると、この薄さに気づかないまま契約に進んでしまう恐れがあります。

この試算はあくまで満室が続いた場合の数字です。家賃が入居者の入れ替わりで数千円下落するだけでも、年間の手残りは簡単にマイナスに転じます。区分は運営費そのものの金額こそ小さいものの、収支の余白がもともと薄いという点を押さえておく必要があります。

クレーンが立つ建設現場。新築時の見た目に惑わされず、土地値と建物価値を分けて考える習慣が必要です。
クレーンが立つ建設現場。新築時の見た目に惑わされず、土地値と建物価値を分けて考える習慣が必要です。
試算

一棟アパート8戸の収支—表面8%でも運営費は重い

一棟アパートの表面利回りは、満室想定家賃400万円÷価格5,000万円で8.0%です。運営費(管理費・修繕積立金・固定資産税等、家賃の20%を目安に想定)は年間80万円とし、満室時のNOIは320万円、NOI利回りは6.4%になります(いずれも筆者試算の目安)。

借入4,500万円・35年・金利2.4%の年間返済額は約190.5万円です(筆者試算の目安)。満室時のDSCRは320万円÷190.5万円で1.68。区分の1.07を大きく上回ります。

ただし一棟は戸数が多い分、空室が発生する確率そのものは区分より高くなります。8戸のうち1室が空室になった場合、家賃は350万円、運営費70万円、NOIは280万円、DSCRは1.47。2室空室でも家賃300万円・運営費60万円・NOI240万円・DSCR1.26と、金融機関の目安である1.3にわずかに届かない程度で踏みとどまります。

NOI利回りやDSCRの詳しい計算順序は、指標階層の記事で解説しています。表面利回りの高さだけを見て判断すると、運営費の重さを見落とすのは区分も一棟も同じです。

戸数が多い分、退去のたびに発生する原状回復費や広告料も、一棟のほうが件数として多くなります。表面利回り8.0%という数字は、こうした細かな出費を運営費20%の中に織り込んだうえでの数字であり、実際の管理会社への支払いはさらに細かく変動します。

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上記はINVASEの公表値・公開情報にもとづく記載です。最新の条件は公式サイトでご確認ください。

比較

10年後の手残りとバランスシートを並べて見る

ここまでの数字を10年間積み上げると、区分と一棟の差はさらに広がります。区分は、平均的な空室(年1か月程度を想定)を織り込むと、年間キャッシュフローはほぼゼロ、10年累計でも−10万円程度にとどまります(筆者試算の目安)。一棟は、1室が常に空室という保守的な想定でも、年間キャッシュフローは89.5万円、10年累計では895万円に達します(筆者試算の目安)。

項目区分マンション一棟アパート
10年累計キャッシュフロー−10万円895万円
ローン元本圧縮額約550万円約1,230万円
10年後の残債約1,450万円約3,270万円
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(いずれも筆者試算の目安。家賃下落や修繕費の変動は考慮していない簡易モデルです)

次の図で、この累計額を比べてみましょう。

10年後の累積キャッシュフロー(筆者試算の目安)895万円−10万円区分マンション一棟アパート区分は平均空室年1か月、一棟は1室空室が続く想定図2 自己資金500万円は同じでも、10年後の累積手残りには900万円超の差が生まれます(筆者試算の目安)。

ローンの残債も見ておくと、区分は2,000万円の借入のうち約550万円分の元本が減り、残債は約1,450万円。一棟は4,500万円のうち約1,230万円分が減り、残債は約3,270万円です(いずれも筆者試算の目安)。自己資金500万円という同じ出発点から、10年後には手残りと元本圧縮の両方で、一棟が上回るという結果になりました。

ここまでの数字は、家賃の下落や大規模修繕の発生といった、10年間に起こりうる変動を織り込んでいない単純化したモデルです。実際には一棟のほうが、外壁や屋根といった大きな修繕費の発生が数百万円単位になりやすく、その分キャッシュフローの振れ幅も大きくなる点は補足しておきます。

構造

区分は空室率が0%か100%しかないという物理的限界

ここで見落とされがちなのが、区分マンションの構造的な弱点です。区分は1戸しか持てないため、入居者がいなければ収入はゼロ、いれば満室という、0%か100%かの2択しかありません。空室率という言葉自体、1戸だけの物件には本来なじみません。

一棟は「分散」が効く

一棟アパート8戸であれば、1室が空室になっても残り7室から家賃が入り続けます。次の図で、この違いを見てみましょう。

区分マンション1戸入居中家賃 月9.5万円空室収入 月0円一棟アパート8戸入居入居入居入居入居入居空室空室2戸空室でも、残り6戸分の家賃(月25.0万円)が入り続けます首都圏の空室率目安(10〜11%)は複数戸の平均値。区分1戸には当てはまりません図3 区分は空室になれば収入ゼロ、一棟は複数戸の家賃で穴を埋められます。

区分で入居者が退去すれば、翌月から手残りは月5,000円の黒字から一気に月7万円超の赤字に転落します(前提条件に基づく筆者試算の目安)。一方、一棟で1室が退去しても、残り7室の家賃で運営費とローン返済の大半をまかなえます。

この「分散が効くかどうか」は、表面利回りの数字には表れません。首都圏の空室率は全体で10〜11%程度が目安とされていますが、区分1戸ではこの平均値がそのまま自分の収支に当てはまるわけではなく、入居者が決まるか決まらないかという、極端などちらかの結果しか起きません。

複数戸を持つことの意味は、リターンを増やすことだけではありません。収支の振れ幅そのものを小さくするという、リスク管理としての効果のほうが本質的だと私たちは考えています。区分1戸の投資は、この分散という発想自体を持てない投資だという理解が必要です。

! 知恵袋の生の声

「一棟か区分か」で迷う相談に対し、知恵袋の回答者が共通して口にするのが「不動産会社から積極的に売り込まれる物件は、ほぼ良い物件ではない」という経験則です。優良な土地値の出る物件はそもそも営業をかけなくても売れていくため、電話や訪問で勧められる時点で警戒すべきだという理屈です。

もう一つ繰り返し出るのが、築古・ボロ戸建てに関する指摘です。「耐用年数を超えた木造物件は金融機関の融資が付きにくく、現金で買える人向けの世界」という説明が定番で、フルローンを前提に一棟を検討している相談者への注意喚起として使われています。

こうした指摘の背景には、優良な物件は既存オーナーの紹介や不動産会社どうしのネットワークで先に決まってしまい、広く一般向けに営業される段階では条件の悪い物件しか残っていない、という業界構造への理解があります。「まず自分は現金で買える立場かどうかを自問すべき」という回答も多く見られました。「営業電話の頻度そのものが、その物件の売れ行きの悪さを示すシグナルになる」という見方を示す回答者もいます。電話や訪問での勧誘を受けた場合は、その場で即決せず一度持ち帰って冷静に条件を精査すべきだという助言も添えられています。

自己資金500万・年収700万という同一条件を、区分と一棟でシミュレーションした画面をイメージしています。
自己資金500万・年収700万という同一条件を、区分と一棟でシミュレーションした画面をイメージしています。
核心

一棟の価値は建物ではなく土地値

一棟アパートを評価するとき、私たちが最初に見るのは建物の状態ではなく、その土地の価値です。建物は時間とともに劣化し、法定耐用年数を過ぎればいずれ価値はゼロに近づきます。ですが土地は劣化しません。

公示地価2026では、東京23区の住宅地が前年比+9.0%、都心5区に限れば+13.0%という水準です(2026年公示地価)。土地値が価格に対してどの程度出ているかは、物件によって大きく異なります。土地値が価格の6割程度を占める物件であれば、建物の価値がゼロになっても、土地そのものの値打ちは残り続けます。

✓ 結論

一棟アパートを検討するときは、表面利回りより先に「価格のうち土地値がどの程度を占めるか」を確認する価値があります。

区分マンションにはこの発想がほぼ当てはまりません。区分所有者が持つのは建物の専有部分と、敷地に対するごくわずかな共有持分(敷地権)だけだからです。次のセクションで、この差が「出口」の数にどう影響するかを見ていきます。

土地値のおおよその見当は、路線価と土地面積から概算できます。物件資料に記載された建物の固定資産税評価額と、土地の路線価を突き合わせ、価格全体に占める土地の割合を確認する作業を、私たちは購入前の必須の下調べだと考えています。

出口

土地値が出る物件が持つ2つの出口

土地値が出ている一棟アパートには、出口が2つあります。ひとつは、そのまま賃貸経営を継続するという出口。もうひとつは、建物を取り壊すか古家付きのまま、アパート用地・建売用地として売却するという出口です。次の図で、この2つの出口を整理してみます。

一棟(土地値あり)出口1賃貸継続出口2 土地売却(アパート用地等)立地の底が堅ければ、土地としての需要は残ります区分(敷地権は小さな持分)出口 区分再販のみ(単独では土地を売れない)敷地権は持分が小さく、更地としては売却できません図4 一棟は賃貸継続と土地売却の2つの出口、区分は再販という1つの出口しかありません。

賃貸需要が落ちても、立地の底が堅ければ土地としての需要は残ります。人口が「減らないエリア」を選ぶという視点は、土地値が出るかどうかにも直結します。この出口の広さこそ、一棟アパートが「建物」ではなく「土地」を買う投資だと言われる理由です。

もちろん、すべての一棟アパートに土地値が出ているわけではありません。郊外の広い土地に建つ物件ほど土地値は出やすく、都心の狭小地に高容積率で建つ物件ほど、価格に占める建物比率が高くなる傾向があります。出口戦略そのものについては、5年ルールやデッドクロスも含めて別記事で整理しています

出口が2つあるという事実は、金融機関の担保評価にもよい影響を与えます。土地としての処分価値が見込める物件は、建物だけで評価される物件より、追加融資や借り換えの相談がしやすくなる傾向があると私たちは感じています。

構造

区分マンションにこの出口がほぼない理由

区分マンションの所有者が持つのは、専有部分の所有権と、敷地全体に対するごく小さな共有持分である敷地権です。マンション一棟が仮に建て替えられるとしても、区分所有者は他の数十戸、時には数百戸の所有者と合意形成をする必要があります。単独の意思で「この土地を売る」という決断はできません。

! 注意

区分所有の敷地権は、床面積の割合に応じた持分であり、単独では更地として売却できません。

つまり区分マンションの出口は、実質的に「次の買い手に区分として再販する」という1択しか残らないということです。東京23区中古ワンルームの成約価格は、2013年上期の約1,300万円から2024年上期には約2,400万円まで上昇しており、これまでは再販という出口自体は機能してきました。

ただし金利が上がり、次の買い手の借入余力が縮む局面では、この再販という唯一の出口も、以前より狭くなる可能性があります。出口が1つしかないという構造は、平時には気づきにくく、市況が変わったときに初めて表面化するリスクだと私たちは考えています。

住宅ローンの借入可能額が金利上昇で縮小すれば、区分ワンルームの主な買い手層である会社員の購入余力も同時に縮みます。売る側の出口と、買う側の資金力は、同じ金利という要因でつながっているという点も見落とせません。

10年後の手残りとバランスシートを数字で並べると、区分と一棟の差がはっきり可視化されます。
10年後の手残りとバランスシートを数字で並べると、区分と一棟の差がはっきり可視化されます。
判定

DSCRで比較する金利上昇への耐性

最後に、DSCR(返済余裕率)の視点から区分と一棟の耐性を比べます。次の図は、区分の満室・空室の2状態と、一棟の空室戸数別のDSCRを並べたものです。

空室シナリオ別のDSCR比較(筆者試算の目安)1.31.07収入ゼロ1.681.471.26区分満室区分空室一棟満室一棟1室空室一棟2室空室図5 区分は満室でも1.3の目安を下回り、一棟は2室空室でようやく1.3を割り込みます。

区分は満室でもDSCR1.07と、金融機関の目安である1.3を下回ります。空室になればDSCRという指標自体が成立せず、家賃収入なしにローンだけが残ります。一棟は満室でDSCR1.68、1室空室でも1.47と、1.3の目安を上回り続けます。

2室が同時に空室になった場合でようやく1.26まで下がりますが、それでも収入がゼロになる区分の空室時とは、状況の深刻さが異なります。金利が2.0%から3.0%に上がった場合の実額試算は、別記事でまとめています。金利上昇局面では、この耐性の差が、区分と一棟の優劣を分ける決定的な要因になると私たちは考えています。

DSCRという1つの数字だけを見て安心するのではなく、空室が2室・3室と重なった場合にどこまで耐えられるかを、購入前にシナリオとして複数用意しておくことを私たちはお勧めします。

実務

自己資金500万・年収700万なら、結局どちらを検討すべきか

ここまでの試算を踏まえると、自己資金500万円・年収700万円という条件では、一棟アパートのほうが手残り・耐性・出口のいずれの面でも優位だという結果になりました。ただしこれは、価格・家賃・空室率をすべて筆者が仮に置いた試算であり、実在のどの物件にも当てはまるわけではありません。

一棟アパートには、管理の手間、修繕費の変動、金融機関から融資を受けられるかという審査面のハードルもあります。金融機関ごとの金利帯や年収要件は、一覧記事で確認できます。区分マンションにも、立地次第では今回の前提より条件のよい物件が存在します。

重要なのは、どちらが優れているかを一般論で決めるのではなく、あなた自身の自己資金と年収に置き換えて、同じように試算し直すことです。始める前に確認すべき5つの条件は、判定フロー形式の記事にまとめています。まずは自分がいくらまで借りられるかを把握するところから始めてください。

自己資金が500万円に届かない、あるいはローンを組むこと自体にまだ不安があるという方は、区分か一棟かという選択の前に、もっと小さな単位で不動産に触れる方法から検討を始めても遅くはないと私たちは思います。

よくある質問

区分マンションと一棟アパート、自己資金が同じならどちらが有利ですか

筆者試算の目安では、自己資金500万円・年収700万円という同一条件なら、10年後の手残りとDSCRの両面で一棟アパートが優位という結果になりました。ただし前提となる価格・家賃・空室率次第で結果は変わるため、ご自身の条件で試算し直すことをお勧めします。

区分マンションはなぜ空室に弱いのですか

区分マンションは1戸しか持てないため、入居者がいなければ収入はゼロ、いれば満室という0%か100%かの2択しかありません。一棟アパートのように、複数戸の家賃で空室の穴を埋めるという分散効果が働かない構造だからです。

一棟アパートの「土地値」とはどういう意味ですか

建物は時間とともに劣化し価値が下がりますが、土地は劣化しません。価格のうち土地の価値が占める割合が高い物件ほど、賃貸経営を続ける以外に、アパート用地や建売用地として売却するという出口も持てます。

区分マンションには土地値による出口はないのですか

区分所有者が持つのは、敷地全体に対するごく小さな共有持分(敷地権)だけです。単独の意思で土地を売却する決断はできず、実質的に区分として次の買い手に再販するという出口しか残らない点が、一棟との大きな違いです。

一棟アパートの自己資金比率が低くても融資は通りますか

事件後に標準化した融資基準では、物件価格の2〜3割程度の自己資金を求められる傾向があります。今回の試算のように自己資金比率が10%程度だと、この目安を下回るため、年収や属性次第で審査が厳しくなる可能性があります。

この記事の試算はどの程度信頼できますか

価格・家賃・運営費・空室率はすべて筆者が独自に置いた前提であり、筆者試算の目安です。実在の物件の収支を保証するものではなく、あくまで区分と一棟の構造的な違いを数字で理解するための参考値としてご覧ください。

区分と一棟、初心者はどちらから始めるべきですか?

知恵袋では「まず区分から」という回答と「区分は空室に弱いので一棟から」という回答の両方が見られ、意見は割れています。専門家としては、自己資金の額と物件を見極める目が伴っているかで判断すべきだと考えます。自己資金が限られ、かつ物件精査の経験が浅いうちは、価格の低い区分マンションで数字の読み方に慣れてから一棟に進む方が、失敗時の損失を抑えやすいはずです。

一棟は自己資金50%必要というのは本当ですか?

50%が一律の基準というわけではありませんが、金融機関がここ数年、一棟物件に対して物件価格の2〜3割以上の自己資金を求める傾向を強めているのは事実です。物件の築年数や耐用年数、エリアの担保評価によっては、さらに高い自己資金比率を求められることもあります。「フルローンが出る物件は、むしろ評価が甘い危険な物件」という知恵袋の指摘は、傾向としては的を射ています。

参考にした一次情報 本記事の数値は、上記の一次情報にあたって確認しています。各数値には「いつ時点の、どの機関の数字か」を本文中に明記しました。編集部が独自に計算した数値には「筆者試算の目安」と付記しています。制度・金利は変動しますので、最終的な判断の前には必ず公式の最新情報をご確認ください。
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まとめ

自己資金500万円・年収700万円という同じ条件で試算すると、10年後の手残りとDSCR(返済余裕率)の両面で、一棟アパートが優位だという結果になりました。区分マンションは1戸しか持てないため、空室率が0%か100%かの2択しかなく、分散が効きません。一棟アパートの価値の本体は建物ではなく土地値であり、賃貸継続と土地売却という2つの出口を持てる点も、区分にはない強みです。

ただしこの試算は、価格・家賃・運営費・空室率のすべてを筆者が仮に置いた「筆者試算の目安」です。一棟アパートには、管理の手間や修繕費の変動、自己資金比率が低い場合の審査の厳しさといった、区分にはない負担もあります。どちらが優れているかを一般論で決めるのではなく、あなた自身の自己資金・年収に置き換えて、同じように試算し直すことが欠かせません。

本サイトが立つ場所は、区分か一棟かを一方的に推すことでも、通説をそのまま信じることでもありません。まずご自身がいくらまで借りられるかを把握し、そのうえで数字で検証する。それでも条件を満たす物件だけを、検討の土台に乗せてください。

不動産投資リサーチ編集部(ふどうさんとうしリサーチへんしゅうぶ)/金融・不動産分野のリサーチ/メディア運営 私たちの専門は一つです。業者の販売資料を、公的な一次情報と突き合わせて検証すること。日本銀行の金利統計、東日本レインズの成約データ、日本不動産研究所の投資家調査、国税庁の通達、国土交通省の行政処分情報、各社のIR資料——売り手が語らない数字は、そのすべてが公開されています。ただ、誰も読んでいないだけです。銀行の審査部が物件をどう見ているのかを、投資家側の言葉に翻訳すること。それがこのサイトでやっていることです。
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